診断方法
<診断基準>
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以下のすべての特徴を持つ麻痺(筋力低下)発作を呈する。
- 意識減損を伴わない
- 発作時血清カリウム値が高値あるいは正常を示す
- 呼吸筋・嚥下筋は障害されない
- 発作持続は数10分から数時間程度
- 寒冷、果物などカリウムを多く含む食物の摂取、空腹あるいは安静(不動)が誘因となる
- 通常、発症は15歳までが多い
- 発作間欠期には筋力低下を認めないことが多いが、進行性・持続性の筋力低下を示す例が存在する
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ミオトニーを認める i あるいは ii
- 臨床的にミオトニー現象(筋強直現象)を認める注1
- 針筋電図でミオトニー放電を認める
- 発作間欠期にProlonged exercise test(長時間運動負荷試験)で振幅の漸減現象を認める注2(麻痺発作時の臨床的観察ができていない場合には有用)
- 常染色体性顕性(優性)遺伝の家族歴がある
- 骨格筋型ナトリウムチャネルのαサブユニットの遺伝子に、本疾患特異的な変異を認める注3
除外診断
二次性高カリウム性周期性四肢麻痺(カリウム保持性の利尿薬、アジソン病、腎不全など)、他の筋チャネル病(低カリウム性周期性四肢麻痺、Andersen-Tawil症候群、先天性筋無力症候群、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニーなど)、及び他のミオトニーを呈する疾患(筋強直性ジストロフィーなど)<診断のカテゴリー>
確実例(Definite)
1、2、3に加え6あるいは7を認め、除外診断を除外できること(1の項目を一部しか満たさない場合、5を認めること)。疑い例(Probable)
1、2、3、4を認め、除外診断を除外できる(1の項目を一部しか満たさない場合、5を認めること)。注1 ミオトニー現象(筋強直現象)について
(具体例)- 眼瞼ミオトニア(眼瞼の運動開始遅延、強収縮後の弛緩遅延)を認める
- lid lag(上方注視後の下方視時に生じる上眼瞼の下降遅延)を認める
- 手指を強く握った後に弛緩遅延を認める(把握ミオトニー)
- 診察用ハンマーで母指球や舌などを叩くと筋収縮を認める(叩打ミオトニー)
- なお、ミオトニーは軽い筋のこわばり程度で気づきにくいことがある
- 繰り返しでの増悪(パラミオトニー)、寒冷での悪化を認めることがある
注2 Prolonged exercise test について
典型的な麻痺発作が確認出来ない症例では、Prolonged exercise test による麻痺の再現が有用である。長時間運動負荷(15~45 秒ごとに3~4秒の短い休息を入れながら、2~5分間の負荷)後に最初は1~2分毎、その後は5分毎に、30~45 分にわたってCMAP を記録する。一般に40%以上のCMAP 振幅・面積の低下がある場合異常と判定されるが、人種差が指摘されており注意を要する(臨床神経生理学 2001; 29: 221-7、Ann Neurol 2004; 56: 650-661 など参照)。注3 本疾患特異的な変異
骨格筋型ナトリウムチャネルαサブユニット(Nav1.4)をコードするSCN4A遺伝子は、変異によっては、高カリウム性周期性四肢麻痺のみならず低カリウム性周期性四肢麻痺、先天性筋無力症候群などの原因ともなる。参考文献
当該事業における対象基準
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2025年4月1日
- 文責
- :日本小児神経学会