疾患概念
疫学
病因
骨格筋型ナトリウムチャネルαサブユニット(Nav1.4)をコードするSCN4A遺伝子の異常が原因となる。
非ジストロフィー性ミオトニー症候群 | 高カリウム性周期性四肢麻痺 | 低カリウム性周期性四肢麻痺 | |||||
先天性ミオトニー | カリウム惹起性ミオトニー(ナトリウムチャネルミオトニー) | 先天性パラミオトニー | |||||
トムゼン(Tomsen)病 | ベッカー(Becker)病 | ||||||
原因遺伝子 | CLCN1 | SCN4A |
CACNA1S SCN4A |
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遺伝様式 | 常染色体顕性 | 常染色体潜性 | 常染色体顕性 | 常染色体顕性 | |||
麻痺発作 | 有無 | なし | ± | なし | あり | あり | あり |
発作時間 | 一過性 | 数十分~数時間 | 数十分~数時間 | 数時間~数日 | |||
臨床的ミオトニー | 程度 | 軽度~中等度 | 中等度~重度 | 動揺性~重度までさまざま | 軽度~中等度 | 中等度 | なし |
眼瞼 | あり | あり | あり | あり~± | なし | ||
麻痺又はミオトニーの誘因 | 安静 | 運動、カリウム摂取 | 運動、寒冷 | 運動、寒冷、カリウム摂取 | 炭水化物、運動後の安静、ストレス | ||
ミオトニー対する影響 | くりかえし運動 | 改善(warm-up現象) | なし | 悪化(paramyotonia) | ? | ||
寒冷 | なし | はっきりしない | 増悪 | 増悪 | |||
筋肥大 | 軽度 | 中等度 | 軽度~中等度 | ± | ± | なし |
臨床症状
脱力発作の持続は数10分から数時間程度まで、程度も下肢のみといった限局性筋力低下から完全四肢麻痺まである。発作頻度も毎日から生涯に数回までとかなり幅がある。低カリウム性より程度も軽く持続も短いが、初回発作は小児期と早い。発作の誘発因子として、寒冷、運動後の安静などがある。
高カリウム性ではミオトニー(筋強直現象)を臨床的にあるいは電気生理学的にしばしば認める。発作間欠期には筋力低下を認めないことが多いが、進行性・持続性の筋力低下を示す例が存在する。
診断
診断の際の留意点/鑑別診断
参考事項
- 先天性パラミオトニー、カリウム惹起性ミオトニー(ナトリウムチャネルミオトニー)と症状がオーバーラップする疾患である。
- 発作時に筋痛を伴うことがある。
- 発作からの回復期にはむしろ血清カリウム値が一時的に低値を示すことがある。
- 低カリウム性周期性四肢麻痺に比べ麻痺発作の程度は軽く、持続も短い。
- 発作間欠期には筋力低下を認めないが血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇は認めることがある。一部に進行性に軽度の筋力低下を示すことがある。
- 筋生検は診断のために必要ではないが、空胞、管状凝集体(tubular aggregate)を認めることがある。
除外診断
二次性高カリウム性周期性四肢麻痺(カリウム保持性の利尿薬、アジソン病、腎不全など)、他の筋チャネル病(低カリウム性周期性四肢麻痺、Andersen-Tawil症候群、先天性筋無力症候群、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニーなど)、及び他のミオトニーを呈する疾患(筋強直性ジストロフィーなど)
治療
根本治療は無く、麻痺発作急性期の対症療法、間欠期の麻痺予防治療に分けられるが、十分な効果が得られないこともしばしばである。
麻痺発作時の急性期治療としては、高カリウム性では麻痺は軽度で持続も短いことが多いが、高カリウムによる不整脈、心停止に注意する必要がある。
麻痺の予防としてアセタゾラミドが有効な例があるが、逆に無効や増悪例もある。その他に、高カリウム性ではカリウム喪失性利尿薬なども用いられる。
管理・ケア
食事・栄養
予後
研究班
成人期以降の注意点
参考文献
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2025年4月1日
- 文責
- :日本小児神経学会