診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 脊髄空洞症
4

脊髄空洞症

せきずいくうどうしょう

Syringomyelia

告示

番号:38

疾病名:脊髄空洞症

診断方法

A.症状

緩徐に発病し、以下の症候から少なくとも1項目を認める。
  1. 片側若しくは両側上肢又は頸部や体幹の感覚障害
  2. 片側又は両側上肢の筋力低下及び萎縮
  3. 足底反射異常を伴う痙性又は弛緩性対麻痺
  4. ホルネル(Horner)症候、瞳孔不同、発汗障害、爪の発育障害、起立性低血圧、神経原性関節症、患側の手足の肥大などの自律神経障害
  5. ホルネル(Horner)症候、瞳孔不同、眼振、顔面感覚の低下、舌の萎縮及び線維束性収縮、嚥下困難、嗄声、胸鎖乳突筋萎縮などの脳神経症候
  6. 側弯症

B.検査

空洞の証明は必須事項とする。
  1. MRIで脊髄内に偏在性あるいは中心性の空洞を認める(隔壁様構造物はあってもよい。)。体内金属等によって MRI 検査が施行できない場合には、水溶性造影剤による CT ミエログラフィーにより空洞を確認できる。
  2. キアリ(Chiari)奇形、頭蓋頸椎移行部の骨奇形、脊柱側弯などを伴うことが多い。
注1)
空洞症の MRI 所見
T1 強調画像で辺縁が明瞭な髄液と同じ信号強度を示す髄内占拠病変が上下数節にわたり存在するこ とをもって、脊髄空洞症と診断する。この際、胎生期中心管遺残は除外する。
注2)
キアリ(Chiari)奇形の定義
1型:
小脳扁桃が大後頭孔より3mm 以上下垂し、原則として小脳扁桃の変形を生じているもの。延髄の下垂を伴ってもよい。
2型:
小脳下部(主に虫部)と延髄が大後頭孔より下垂し、第4脳室も下垂する。原則として腰仙部に 脊髄瘤又は脊髄髄膜瘤を伴う。

C.鑑別診断

以下の疾患が除外されていること
  1. 脳幹部・高位脊髄腫瘍
  2. 環軸椎脱臼
  3. 頸椎椎間板ヘルニア
  4. 加齢に伴う変形性脊椎症や靱帯骨化症による脊髄症及び脊髄根症
  5. 運動ニューロン疾患
  6. 若年性一側性上肢筋萎縮症(平山病)
  7. 特発性側弯症

D.参考所見

  1. 空洞形成の急激な進行に先立って、脊髄の腫大と浮腫を伴う presyrinx state と称される状態がある。
  2. 既往に難産あるいは分娩時外傷がみられることがある。
  3. 一部に家族歴をみることがある。
  4. 時に進行停止例や自然緩解例がある。
  5. 外傷や癒着性くも膜炎などに続発する場合がある。
  6. 髄内腫瘍に伴うものは腫瘍嚢胞(Tumor cyst)とし、空洞とはしない。

E.診断

<診断のカテゴリ>
症候による分類

(1) 症候性脊髄空洞症
A.B.1.C.の全てをみたす脊髄空洞症
(2) 無症候性脊髄空洞症
検査で偶然に見つかった脊髄空洞症で、B.1. と C.をみたすもの

成因による分類
(1)
キアリ(Chiari)奇形1型を伴う脊髄空洞症
(2)
キアリ(Chiari)奇形2型を伴う脊髄空洞症
a.
開放性二分脊椎(脊髄髄膜瘤または精髄破裂)
b.
潜在性二分脊椎(脊髄脂肪腫、緊張性終糸、割髄症、皮膚洞、髄膜瘤、脊髄嚢胞瘤などを含む)
c.
上記二分脊椎を伴わないものキアリ(Chiari)奇形の定義
(3)
頭蓋頚椎移行部病変や脊椎において骨・脊髄の奇形を伴い、キアリ(Chiari)奇形を欠く脊髄空洞症
(4)
癒着性くも膜炎に続発した脊髄空洞症
(5)
外傷に続発した脊髄空洞症
(6)
その他の続発性脊髄空洞症
(7)
上記のいずれにも該当しない特発性脊髄空洞症


(4)、(5)、(6)を続発性脊髄空洞症とする。

参考文献

  1. 難病情報センターウェブサイト(指定難病117「脊髄空洞症」) https://www.nanbyou.or.jp/entry/5463#117

当該事業における対象基準

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼、脊柱変形のうち一つ以上の症状が続く場合

:第1版
更新日
:2025年4月1日
文責
:日本小児神経外科学会、日本小児神経学会