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脊髄空洞症

せきずいくうどうしょう

Syringomyelia

告示

番号:38

疾病名:脊髄空洞症

疾患概念

脊髄空洞症は、脊髄内に空洞が形成され、小脳症状、下位脳神経症状、上下肢の筋力低下、温痛覚障害、自律神経障害、側弯症などの多彩な神経症状、全身症状を呈する疾患であり、種々の原因で発症する。約50%はキアリ奇形を基礎疾患とし、ほか二分脊椎症や外傷、腫瘍、くも膜炎等を基礎疾患とする。小児期と成人期に好発し、小児期発症例では空洞により神経症状を呈することは少ないが、30~50%に側弯を合併する。MRIにより脊髄空洞所見を認めることで診断され、また原因疾患の鑑別がなされる。約70%で外科手術は必要となる。神経症状出現例では、約70%で症状の持続や間歇的な進行を呈し慢性の経過をとる。

疫学

患者数 約 2,500人 (1.94人/10万人)

病因

キアリ(Chiari)Ⅰ型奇形、種々の dysraphism(脊椎ひれつ)を伴うもの、繋留脊髄、頭蓋頸椎移行部の骨奇形など、外傷後の脊髄空洞症、癒着性脊髄くも膜炎に続発するものなどがある。なお、髄内腫瘍に伴うものは、腫瘍組織に伴う嚢胞として、脳脊髄液の循環動態の異常を基盤とする空洞症と区別されている。

臨床症状

空洞のある脊髄領域の温痛覚を含めた表在感覚障害がある一方、振動覚や関節位置覚が保持され(解離性感覚障害)、左右差があるのが特徴である。その他に自律神経症状、空洞が拡大すると錐体路徴候、後索の障害もみられるようになる。小児では側弯症の頻度が高い。

検査所見

MRIで脊髄内に偏在性あるいは中心性の空洞を認める。T1 強調画像で辺縁が明瞭な髄液と同じ信号強度を示す髄内占拠病変が上下数節にわたり存在する。

診断

診断の際の留意点/鑑別診断

以下の疾患が除外されていること
  1. 脳幹部・高位脊髄腫瘍
  2. 環軸椎脱臼
  3. 頸椎椎間板ヘルニア
  4. 加齢に伴う変形性脊椎症や靱帯骨化症による脊髄症及び脊髄根症
  5. 運動ニューロン疾患
  6. 若年性一側性上肢筋萎縮症(平山病)
  7. 特発性側弯症

治療

内科的薬物療法、理学療法、外科的に大孔部減圧術、空洞-くも膜下腔短絡術などの手術が行われる。
対症的治療としての手術療法は一定程度確立しており、手術療法により臨床症状が改善する症例もある。しかし、根治療法ではないので、脊髄内の空洞は完全には消失せず残存する例がある。手術療法後も後遺症により継続的な治療を必要とする症例も存在する。

予後

症候例の約70%は慢性、進行性の経過をとる。予後は病因により異なりキアリ1型奇形に伴う例では治療効果が比較的良好であるが、くも膜炎を伴う例では症状の改善が不良であり継続的な治療が必要となる場合もある。

研究班

神経変性疾患領域の基盤的調査研究班

成人期以降の注意点

研究班によるレセプトデータの解析では、小児科で脊髄空洞症の診療を受けた107例中27例(25%)で15歳以降も小児科に通院しており、小児科診療を終了した27例(25%)は脳神経外科等の成人医療に移行している。

参考文献

  1. 脳神経外科学体系 小児脳神経外科 第1版(2004年)、中山書店、p.192-203.
  2. 脳神経外科学 改訂13版(2021年)、金芳堂、p.2274-2285.
  3. 小児神経の画像診断 第1版(2010年)秀潤社、p.588-597
  4. 難病情報センターウェブサイト(指定難病117「脊髄空洞症」) https://www.nanbyou.or.jp/entry/5463#117
:第1版
更新日
:2025年4月1日
文責
:日本小児神経外科学会、日本小児神経学会