診断方法
【限局性皮質異形成(FCD)の分類】
FCDタイプ1a) | 1a: 微小柱状構造の増生 | 1b: 層構造の異常 | 1c: 垂直および水平方向の異常 | |
FCDタイプ2a) | 2a: 異型ニューロン | 2b: 異型ニューロンとバルーン細胞 | ||
FCDタイプ3a) | 3a: 海馬硬化症に関する皮質層形成異常 | 3b: 脳腫瘍に近接する皮質層形成異常 | 3c: 脳血管奇形に近接する皮質層形成異常 | 3d: 脳卒中など周産期病変に近接する皮質層形成異常 |
白質a) | 異所性ニューロン過多a)を伴う mMCDb) | 乏突起細胞の増生を伴う mMCD (MOGHE)c) | ||
組織病理学的に明らかなFCDなしa) 皮質構造異常を確定できず、組織病理学的に FCDタイプ1, 2, 3 に当てはまらないd) |
- a)
- 大脳皮質構築異常の検出と分類に免疫組織化学染色を行うことが推奨される。用いる工程はNeuN, neurofilaments, vimentin, MAP2, CD34, OLIG2, GFAP, またはαB-crystalinである。適切な免疫組織科学染色が行われていない場合には”未特定 not otherwise specified (NOS)の用語を用いる(例えば”FCD type Ⅰ (NOS)”など)”
- b)
- 軽微大脳皮質形成異常 mild malformation of cortical development (mMCD)。海馬硬化症、脳腫瘍、血管奇形などの原発病変と関連しない。
- c)
- MOGHEは基本的に白質の異常だが、MRIで異常な脳溝や脳回を認めることもあり、これらの合併によりFCDと診断されることが多い。
- d)
- 臨床的にFCDが疑われる症例でこの分類を行う場合は、解剖学的に確定できない点を説明する報告書が推奨される。
A.症状
- 種々のてんかん発作がみられる。
- てんかん発作は、乳幼児~学童期に多いが、中学生以降あるいは成人でも発症する。
- 精神発達遅滞などの他の障害を伴うこともある。
B.検査所見
- 血液・生化学的検査所見:特異的所見なし。
-
画像検査所見:
MRIで病変が捉えられるのは、FCDタイプ2bはほぼ全例、FCDタイプ2aは3割程度、FCDタイプ1は通常捉えられない。
FCD2型はMRI画像で、①皮質の肥厚、②皮髄境界の不明瞭化、③T2強調画像、プロトン密度強調画像、FLAIR法で病変部位の高信号を認める。また、脳の深部から脳表連続した高信号の線状所見がみられることがある。
SPECTによる局所脳血流変化は診断の参考になる。 - 生理学的所見:脳波では局在性異常波が記録される。特に反復性棘波が記録されるとFCDの可能性が高い。脳磁図による双極子の集積も参考になる。
- 病理所見:FCDタイプ2は、皮質神経細胞の配列が激しく乱れ、異型細胞の出現を伴う。一方、FCDタイプ1は、皮質神経細胞の配列に乱れを認めるものの、異型細胞を伴わない。そこでは、皮質分子層における神経細胞数の増加、皮質第2層における神経細胞数の増加、神経細胞の集簇像、皮質下白質における異所性神経細胞数の増加、白質内異所性灰白質結節、あるいは多小脳回にみられる脳回パターンの異常が様々な程度と組み合わせで観察される。
C.鑑別診断
種々の腫瘍、血管病変、結節性硬化症などを鑑別する。
D.診断
A.1. と B.3.から限局性皮質異形成を疑い、B.2. にて確定する。ただし、FCDタイプ2aの一部及びFCDタイプ1 は、B.4. にて確定する。
参考文献
- 難病情報センター 限局性皮質異形成
- 難治性てんかんの外科治療 診断と治療社
- Juric-Sekhar G, Hevner RF. Malformations of Cerebral Cortex Development: Molecules and Mechanisms. Annu Rev Pathol. 2019 Jan 24;14:293-318.
- Najm I, et al. The ILAE consensus classification of focal cortical dysplasia: An update proposed by an ad hoc task force of the ILAE diagnostic methods commission. Epilepsia. 2022 Aug;63(8):1899-1919. doi: 10.1111/epi.17301. Epub 2022 Jun 15. PMID: 35706131; PMCID: PMC9545778.
当該事業における対象基準
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2025年4月1日
- 文責
- :日本小児神経学会