1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 脳形成障害
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限局性皮質異形成

げんきょくせいひしついけいせい

Focal cortical dysplasia

告示

番号:87

疾病名:限局性皮質異形成

疾患概念

大脳皮質における局所的な発生異常(神経細胞の発生、増殖及び遊走の障害)に関連した病巣により、主としててんかん発作を呈する。てんかん発作は主に乳幼児~学童期に発症するが、中学生以降あるいは成人でも発症する。MRIにより限局性の皮質を主体とする特徴的な異常所見で検出される一方、MRI異常を欠き病理診断で明らかになる場合もある。大脳皮質神経細胞の配列が様々な程度に乱れる。病理組織学的所見の特徴からタイプ分類がなされる。大脳皮質のどこにでも生じうる。

疫学

不明。国内に数千人の患者がいると推定される。

病因

原因は不明で遺伝的素因は知られていないが、FCDタイプ2の発生には発達中の脳における体性遺伝子の突然変異が関与している。特に細胞の分化・増殖に関連するPI3K-AKT3-mTOR シグナル伝達経路の遺伝子(AKT3DEPDC5NPRL2NPRL3PIK3CARHEBMTORTSC1TSC2 )の突然変異が高率に報告されている。

病理・病態

病理所見:
FCDタイプ2は、皮質神経細胞の配列が激しく乱れ、異型細胞の出現を伴う。一方、FCDタイプ1は、皮質神経細胞の配列に乱れを認めるものの、異型細胞を伴わない。そこでは、皮質分子層における神経細胞数の増加、皮質第2層における神経細胞数の増加、神経細胞の集簇像、皮質下白質における異所性神経細胞数の増加、白質内異所性灰白質結節、あるいは多小脳回にみられる脳回パターンの異常が様々な程度と組み合わせで観察される。

臨床症状

限局性皮質異形成の存在部位に応じて、てんかん発作症状は多彩である。乳幼児ではてんかん性脳症(てんかんが認知機能を進行性に障害する)を呈することもある。長じては、主として部分てんかんを呈し、異形成を中心としたてんかん焦点の発作症状を示す。てんかん重積状態を来すこともある。精神発達遅滞などの他の障害を伴うこともある。

検査所見

  1. 血液・生化学的検査所見 : 特異的所見なし。
  2. 画像検査所見 : MRIで病変が捉えられるのは、FCDタイプ2bはほぼ全例、FCDタイプ2aは3割程度、FCDタイプ1は通常捉えられない。
    FCD2型はMRI画像で、①皮質の肥厚、②皮髄境界の不明瞭化、③T2強調画像、プロトン密度強調画像、FLAIR法で病変部位の高信号を認める。また、脳の深部から脳表連続した高信号の線状所見がみられることがある。
    SPECTによる局所脳血流変化は診断の参考になる。
  3. 生理学的所見 : 脳波では局在性異常波が記録される。特に反復性棘波が記録されるとFCDの可能性が高い。脳磁図による双極子の集積も参考になる。
  4. 病理所見 : FCDタイプ2は、皮質神経細胞の配列が激しく乱れ、異型細胞の出現を伴う。一方、FCDタイプ1は、皮質神経細胞の配列に乱れを認めるものの、異型細胞を伴わない。そこでは、皮質分子層における神経細胞数の増加、皮質第2層における神経細胞数の増加、神経細胞の集簇像、皮質下白質における異所性神経細胞数の増加、白質内異所性灰白質結節、あるいは多小脳回にみられる脳回パターンの異常が様々な程度と組み合わせで観察される。

診断

症状と脳波所見から限局性皮質異形成を疑い、画像検査所見で特徴的な所見を認めれば確定する。ただし、画像検査で異常の乏しいタイプは病理所見にて確定する。

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診断の際の留意点/鑑別診断

鑑別診断 : 種々の腫瘍、血管病変、結節性硬化症、後天的な脳損傷、萎縮性脳回などを鑑別する。

治療

抗てんかん発作薬が積極的に用いられるが、多くは薬剤抵抗性である。異形成が画像診断で同定でき、臨床所見や脳波所見と一致する場合には積極的に切除手術や凝固手術が行われる。しかし、異形成の広がりを推定することが困難であり、十分な切除や凝固が行われないとてんかん発作が残存する。また、異形成が機能的に重要な脳部位(運動皮質や言語領域など)を巻き込んでいる場合や、異形成が多発性の場合には、切除手術は困難である。

予後

てんかんが進行性に増悪することは少ないが、年齢とともに発作が軽減することもなく、てんかんは難治なままである。頻発する発作による社会的な支障は極めて大きい。けいれん重積状態になり重篤な後遺症を残すこともある。治療(特に外科治療)により発作が消失した場合は、発達の回復が得られることもある。

研究班

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「稀少てんかんに関する調査研究」班

成人期以降の注意点

てんかんは薬剤抵抗性のことが多いため、成人期以降も抗てんかん薬の継続が必要となる。場合によっては多剤併用のため、副作用に注意しながら管理する必要がある。頻発する発作による社会的な支障は極めて大きいため、福祉サービスの利用も必要となるケースが多い。

参考文献

  1. 難病情報センター 限局性皮質異形成
  2. 希少てんかんの診療指標.日本てんかん学会, 東京, 診断と治療社, 2017年
  3. 難治性てんかんの外科治療 診断と治療社, 2007年
  4. てんかん症候群 乳幼児・小児・青年期のてんかん学 改訂第6版, 中山書店, 2021年
  5. Juric-Sekhar G, Hevner RF. Malformations of Cerebral Cortex Development: Molecules and Mechanisms. Annu Rev Pathol. 2019;14:293-318.
  6. 神経細胞移動異常症 診療ガイドライン(第 2 版) 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「稀少てんかんに関する調査研究」班, 2022年
:第1版
更新日
:2025年4月1日
文責
:日本小児神経学会