1. 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
  2. 大分類: 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
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シャーフ・ヤング(Schaaf-Yang)症候群

しゃーふ・やんぐ しょうこうぐん

Schaaf-Yang syndrome

告示

番号:21

疾病名:シャーフ・ヤング症候群

疾患概念

シャーフ・ヤング(Schaaf-Yang)症候群は精神運動発達遅滞、新生児期の筋緊張低下、乳児期の哺乳不良、遠位側優位の関節拘縮、などを特徴とする先天異常症候群であり、インプリンティング遺伝子であるMAGEL2の短縮型変異が原因である。2022年の全国調査では約30例が報告されている。哺乳不良、呼吸障害などのために早期から生涯にわたる医療管理を必要とする。

疫学

2022年の全国調査では27症例の登録があった。主に小児例の調査であり、全年齢を対象とした調査は現時点では行われていない。

病因

15番染色体q11-q13に位置する刷り込み遺伝子MAGEL2の短縮型変異により発症する。MAGEL2は父由来アレルのみが発現しており、ゲノム刷り込み現象により発現が制御されている。MAGEL2遺伝子の機能については不明な点が多い。

臨床症状

発達遅滞、新生児期の筋緊張低下、乳児期の哺乳不良、遠位側優位の関節拘縮、特徴的顔貌(浅い鼻唇溝、大きな耳)など。

診断

発達遅滞、新生児期の筋緊張低下、乳児期の哺乳不良、遠位側優位の関節拘縮などの症状を認め、MAGEL2遺伝子解析による短縮型変異を検出することによる。

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診断の際の留意点

当初 Prader-Willi 症候群(PWS)を疑われたが、遺伝学的解析によって否定された症例がしばしば認められる。PWSの症状と比較すると、過食や乳児期以降の体重増加が少なく、発達の遅れは重度なことが多い。MAGEL2遺伝子変異は父親アレル由来である必要がある。

治療

本質的な治療法は確立していない。哺乳・嚥下障害では、経管栄養・胃瘻造設を考慮する。呼吸障害には酸素療法、非侵襲的人工換気、気管切開を考慮する。種々の合併症に対する対症療法が行われる。

予後

有意語獲得は困難な場合が多いが、適切な療育訓練で一定の理解力促進は可能である。歩行機能獲得に至らない例もあり、各種バギーや車いすの作成が必要になる。

予後不良症例の対応

重症心身障害の一般的な対応に準じる。

患者会

Schaaf-Yang症候群 SYS患者家族会

研究班

Schaaf-Yang 症候群の診療および遺伝学的診断ガイドラインの作成とレジストリー作成と自然歴に関する研究

成人期以降の注意点

成人期以降の長期予後についてのデータ集積はない。加齢とともに側彎後彎などの脊椎変形、骨量減少によりADLが低下することが危惧される。

参考文献

  1. Negishi Y et al. J Hum Genet 2022;67:735-738.
  2. Castilla-Vallmanya L et al. J Med Genet 2022;60(4):406-415
:第1版
更新日
:2025年4月1日
文責
:日本小児遺伝学会