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非ジストロフィー性ミオトニー症候群

ひじすとろふぃーせいみおとにーしょうこうぐん

Non-dystrophic myotonia

告示

番号:98

疾病名:非ジストロフィー性ミオトニー症候群

疾患概念

筋線維の興奮性異常による筋強直(ミオトニー)現象を主徴とし、筋の変性(ジストロフィー変化)を伴わない遺伝性疾患である。臨床症状や原因遺伝子から先天性ミオトニー、先天性パラミオトニー、ナトリウムチャネルミオトニーなどに分類される。筋強直性ジストロフィーは、同様に筋強直現象を示す関連疾患ではあるが、非ジストロフィー性ミオトニー症候群には含めない。

疫学

本邦での正確なデータはないが、世界的には10万人当たり1人程度とされる。

病因

先天性ミオトニーは塩化物イオンチャネル(CIC-1)をコードするCLCN1遺伝子の異常による。顕性(優性)遺伝形式をとるトムゼン病と潜性(劣性)遺伝形式をとるベッカー病がある。一方、先天性パラミオトニー、ナトリウムチャネルミオトニーはともに顕性(優性)遺伝形式で、骨格筋型ナトリウムチャネルαサブユニット(Nav1.4)をコードするSCN4A遺伝子の異常による。

非ジストロフィー性ミオトニー症候群 高カリウム性周期性四肢麻痺 低カリウム性周期性四肢麻痺
先天性ミオトニー カリウム惹起性ミオトニー(ナトリウムチャネルミオトニー) 先天性パラミオトニー
トムゼン(Tomsen)病 ベッカー(Becker)病
原因遺伝子 CLCN1 SCN4A CACNA1S
SCN4A
遺伝様式 常染色体顕性 常染色体潜性 常染色体顕性 常染色体顕性
麻痺発作 有無 なし ± なし あり あり あり
発作時間 一過性 数十分~数時間 数十分~数時間 数時間~数日
臨床的ミオトニー 程度 軽度~中等度 中等度~重度 動揺性~重度までさまざま 軽度~中等度 中等度 なし
眼瞼 あり あり あり あり~± なし
麻痺又はミオトニーの誘因 安静 運動、カリウム摂取 運動、寒冷 運動、寒冷、カリウム摂取 炭水化物、運動後の安静、ストレス
ミオトニー対する影響 くりかえし運動 改善(warm-up現象) なし 悪化(paramyotonia)
寒冷 なし はっきりしない 増悪 増悪
筋肥大 軽度 中等度 軽度~中等度 ± ± なし

臨床症状

外眼筋・顔面筋・舌筋を含む全身の骨格筋にみられる筋のこわばり(筋強直)が主症状である。手を強く握ったあと開きにくい(把握ミオトニー)、診察用ハンマーで筋肉を叩くと筋が収縮する(叩打ミオトニー)などが観察される。筋強直は痛みを伴うこともある。

通常のミオトニーが運動開始時に多くみられ、反復運動によって筋強直が改善する(warm-up現象)のに対して、先天性パラミオトニーで見られるパラミオトニー(異型筋強直)は奇異性ミオトニア(paradoxical myotonia)とも呼ばれ、反復収縮や寒冷刺激などによる筋強直症状が悪化する。

先天性パラミオトニーでは、筋強直は寒冷で増悪することが多く、一過性の麻痺を来すこともしばしばである。筋肥大を伴いヘラクレス様体型となることもあるが、一方で進行性に筋萎縮・筋力低下を来す例もある。また、幼少期からの筋強直により関節拘縮、脊柱側弯などの骨格変形を伴うことがある。

診断

診断の際の留意点/鑑別診断

鑑別診断

  • 筋強直性ジストロフィー
  • シュワルツ・ヤンペル症候群
  • アイザックス症候群(neuromyotonia)
  • 糖原病2型(Pompe病)

治療

対症療法のみである。メキシレチンなど抗不整脈薬、カルバマゼピンなど抗てんかん薬などが筋強直症状を緩和する。

予後

非進行性と一般にされているものの、筋力低下、筋萎縮を呈する例が少なからず存在する。乳幼児期に強度の筋強直によりチアノーゼなどの呼吸不全や哺乳困難を来すタイプもある。

研究班

厚生労働省難治性疾患政策研究班「希少難治性筋疾患に関する調査研究」班

成人期以降の注意点

症状は成人期に至っても続くことが多い。

文献

:第1版
更新日
:2025年4月1日
文責
:日本小児神経学会