1. 皮膚疾患
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限局性強皮症

げんきょくせいきょうひしょう

Localized scleroderma/morphea

告示

番号:2

疾病名:限局性強皮症

疾患概念

限局性強皮症は皮膚及びその下床に限局した組織傷害とそれに続発する皮膚硬化・線維化を呈する疾患である。時に組織傷害が脂肪織・筋・骨などの深部に及ぶことにより患部の萎縮・変形・成長障害を引き起こす。全身性強皮症と異なり、手指硬化、レイノー現象や内臓病変は伴わない。皮疹の性状や分布・障害の程度は多彩であるが、近年、臨床的特徴と組織学的分類により、①Circumscribed morphea(斑状強皮症)、②Linear scleroderma(線状強皮症)、③Generalized morphea(汎発性限局性強皮症)、④Pansclerotic morphea、⑤Mixed morpheaの5型の分類が欧州小児リウマチ学会より提唱されており、本手引きでもそれに従う。

疫学

海外の報告では、10万人あたり0.34~2.7人程度と報告されており、本邦でも同程度と推察される。男女比は1:2~4程度で女児に多いとされる。小児期発症が2/3程度との報告もあり、若年発症が多いとされる。

病因

限局性強皮症の病因は不明であるが、病変部位で比較的強い炎症細胞浸潤がみられ、高頻度に自己抗体が検出されることから、自己免疫が発症に関与していると考えられている。またBlaschko線に沿って生じる症例も多いことから、体細胞モザイクの関与も示唆されている。

病理・病態

病理組織学的所見として、膠原線維の膨化・増生(線維化)が真皮を中心にみられ、ときに深部にも及ぶ。その他、血管周囲の炎症細胞浸潤がみられることが特徴であり、活動性病変においては時に液状変性や組織学的色素失調が見られることもある。また、病期により所見の変化が見られ、病初期は炎症所見が強く見られるが、晩期では目立たなくなる。

臨床症状

限局性強皮症は皮疹の形態学的特徴と分布および組織学的特徴から、以下の5つに分類される。

① Circumscribed morphea(斑状強皮症)
1~数個までの類円形から楕円形の境界明瞭な局面が躯幹ないし四肢に散在性に生じる。紅斑局面から硬化局面まで様々な様態を呈するが、初期の皮疹は中央が象牙様光沢を有し、辺縁にはライラック輪と呼ばれる炎症を反映した発赤を伴う。
② Linear scleroderma(線状強皮症)
四肢、顔面、頭部に境界が比較的不明瞭で陥凹した片側性の線状ないし帯状の色素の変化を伴う硬化局面として分布する。 頭頚部にみられる場合、Morphea en coup de sabre(剣創状強皮症)とよばれる。
③ Generalized morphea(汎発型限局性強皮症)
以下の2項目の両方を満たした場合、generalized morpheaと分類する。
  1. 直径 3cm 以上の皮疹が4つ以上ある(皮疹のタイプは斑状型でも線状型のどちらでもよい)
  2. 体を7つの領域(頭頸部、右上肢、左上肢、右下肢、左下肢、体幹前面、体幹後面)に分類したとき、皮疹が2つ以上の領域に分布している
④ Pansclerotic morphea
Generalized morphea(汎発型限局性強皮症)のうち、高度にかつ進行性に病変が深部に及び、筋、腱、骨を侵すもの
⑤ Mixed morphea
Circumscribed morphea(斑状強皮症)、Linear scleroderma(線状強皮症)、Generalized morphea(汎発型限局性強皮症)、Pansclerotic morpheaのうち 2つ以上の病型が共存するもの

検査所見

血液検査所見

疾患特異的な血液検査所見はないが、約50%程度に抗ssDNA抗体が陽性となり、抗体価と疾患活動性が相関する場合が多い。その他、抗核抗体及びリウマトイド因子がともに60%程度陽性となり、多様な免疫異常を反映していると考えられている。

画像所見

画像所見は本症の病変の広がりを評価するのに有用とされている。造影MRIは皮膚、脂肪組織を含めた下床の病変について早期病変も評価できる。またドップラー超音波検査もエコー輝度と血流の測定により、皮膚と下床の病変の評価が可能であり、簡便で鎮静不要であることから小児では特に有用な検査である。また、剣創状強皮症では脳病変の有無の評価において、CTやMRIが有用であり、またこれらの検査で器質的異常が見られない場合にも脳波やSPECTで異常所見を検出できることがある。

診断

以下の三項目をすべて満たす場合に限局性強皮症と診断する。

  1. 境界明瞭な皮膚硬化局面がある
  2. 病理組織学的に真皮の膠原線維の膨化・増生がある
  3. 以下の疾患を除外できる(ただし、合併している場合を除く)
    全身性強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬、ケロイド、(肥厚性)瘢痕、硬化性脂肪織炎

診断の際の留意点/鑑別診断

限局性強皮症は、手指硬化、レイノー現症、爪郭部毛細血管の異常、内臓病変、全身性強皮症に特異的な自己抗体を伴わない点などで全身性強皮症と鑑別を行う必要がある。その他、好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬、ケロイド、(肥厚性)瘢痕、硬化性脂肪織炎などに関しては、時に病期やタイプにより組織学的に類似している場合もあるため、皮疹の性状や部位・分布を含めた臨床所見、病理組織学的所見、経過などを総合的に判断して診断することが必要である。

合併症

皮膚の下床の組織に病変が及ぶ場合は、脂肪組織・筋・腱・骨の傷害がみられ、四肢においては時に患肢の萎縮・変形・脚長差などによる成長障害がみられる。また、頭頚部の病変の場合は脳病変(てんかん、片頭痛、神経痛、麻痺、けいれん)や眼症状を合併する。

治療

限局性強皮症の治療は、①疾患活動性を抑えるための治療と、②完成された病変による機能障害・整容的問題に対する治療が行われる。

① 活動性病変に対する治療
皮膚症状が主体の場合は主に局所療法(ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、光線療法など)が行われる。皮膚外症状を来す場合、機能障害・合併症が懸念される場合、活動性が高く急速拡大・広範囲に及ぶ場合などには全身療法(ステロイド内服や免疫抑制薬内服など)も検討する必要がある。
② 完成された病変に対する治療
疾患活動性がなく完成された病変において、機能障害や整容的問題がある場合は、個々の症例の必要性に応じて、理学療法や外科的治療を検討する。

予後

症状が皮膚病変のみの場合は、予後は良好であるが、時に永続的な瘢痕や陥凹・色素沈着を残す。病変が四肢関節や筋に及ぶ場合は関節拘縮による機能障害や患肢の萎縮・短縮などの成長障害を残す。頭頚部に病変がみられる場合にはてんかんや中枢神経障害などの脳病変の合併や顔面の変形による著しい整容的問題を残すことがある。

研究班

「強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン・疾患レジストリに関する研究」班

成人期以降の注意点

疾患活動性が見られなくなった場合も、時に症状の再燃が見られる場合があるため長期的観察が必要である。また、四肢の機能障害や成長障害の後遺症による理学療法や脳病変などに対する治療を成人期以降も必要に応じて継続していくことが重要である。

参考文献

  1. 浅野善英・他:「限局性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン」日皮会誌 126:2039-2067,2016.
  2. Li SC: Scleroderma in Children and Adolescents: Localized Scleroderma and Systemic Sclerosis. Pediatr Clin North Am; 65:757-781, 2018.
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  6. 浅野善英:小児の全身性強皮症・限局性強皮症:皮膚病診療 43:196-203, 2021.
  7. 佐藤伸一:限局性強皮症の診断と治療:皮膚科の臨床 52:1047-1056, 2010.
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児皮膚科学会
日本小児リウマチ学会