1. 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
  2. 大分類: 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
35

染色体又は遺伝子異常を伴い特徴的な形態的異常の組み合わせを呈する症候群(厚生労働省健康局長の定めるものに限る。)

告示

番号:22

疾病名:染色体又は遺伝子異常を伴い特徴的な形態的異常の組み合わせを呈する症候群(厚生労働省健康局長の定めるものに限る。)

疾患概念

重度の発達遅滞または知的障害、言語発達遅滞、摂食障害を特徴とする先天異常症候群である。他に筋緊張低下や関節の屈曲拘縮、成長障害、特徴的な顔貌、斜視、けいれん、睡眠障害、歯の異常を認める。ASXL3 遺伝子におけるヘテロ接合性の病的バリアントを原因とする。

疫学

未診断の重度精神発達遅滞例のなかに認めることがしばしばある。国内でも約10例が確認されている。

病因

ASXL3 遺伝子の機能喪失変異によって発症する。その遺伝子産物は転写調節を行っている。臨床症状が重なるBoring-Opitz症候群はASXL1 遺伝子の機能喪失変異を原因としている。

臨床症状

重度の言語発達の遅れ、筋緊張低下、てんかん、精神発達遅滞、知的障害を呈する。アーチ状の眉、円筒状の鼻、下に伸びた鼻中隔、厚い下口唇などからなる特徴的な顔貌を認める。自閉スペクトラム障害、自傷行動も認める。骨格はマルファン症候群様の体型や側弯を認める。睡眠障害は比較的多く、睡眠時無呼吸などを伴うことがある。斜視や屈折異常、歯列や咬合の異常も認める。

診断

臨床症状の組み合わせから本症を疑い、ASXL3 遺伝子に病的バリアントをヘテロ接合として認めれば診断が確定する。

診断の際の留意点/鑑別診断

重度の精神発達遅滞を呈する疾患を鑑別する。同じASXL遺伝子ファミリーであるASXL1ASXL2 の異常を原因とするBoring-Opitz症候群やShashi-Pena症候群とも症状が共通するので、鑑別を要する。

治療

対症療法が中心となる。早期からのリハビリテーションや療育の参加は重要。摂食障害や哺乳障害などには経管栄養や摂食指導も考慮する。また、逆流や誤嚥性肺炎などを繰り返す場合には胃ろう造設も考慮する。てんかんに対しては抗てんかん薬を用いる。無呼吸や換気障害では、呼吸モニターを行う。整形外科的、眼科的、歯科などの各領域の合併症に対しての評価、管理を考慮する。

予後

予後は、合併するてんかんなどの神経症状および無呼吸発作や低換気などの呼吸障害、気道感染などによる。

研究班

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天異常症候群のライフステージ全体の自然歴と合併症の把握:Reverse phenotypingを包含したアプローチ」

成人期以降の注意点

栄養管理や側弯の進行、てんかん発作、睡眠時無呼吸、気道感染に注意する。

参考文献

  1. Balasubramanian M, Schirwani S. ASXL3-Related Disorder. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA, et al., eds. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; November 5, 2020.
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児遺伝学会