概念・定義
異常に拡張した洞様血管が限局的に密に集合し、そのため各血管の間に正常脳組織がみられない先天性血管奇形である。
病因
先天性のほか、放射線治療などが原因となることが知られている。
疫学
脳海綿状血管腫は1991年にRobinsonらにより発生頻度が0.47%と報告され、比較的頻度の高い疾患である。そのほとんどは無症状であり、年間出血率は0.7%程度とされている。しかしいったん出血した場合、場所や程度によっては麻痺や意識障害などの重篤な後遺症を残してしまう。また1995年にKondziolkaらが一度出血した場合の再出血率は年4.5%で、出血の既往がない例の年0.6%を大きく上回っていたと報告している。
臨床症状
発生部位によって違ってくる。テント上では出血、けいれん、テント下では巣症状を示すことが多い。脊髄の場合、出血した部位以下の麻痺やしびれが生じる。
検査所見
単純CTでは一般に高吸収域を示し、まだらな粒状石灰野としてみられることもある。MRIではT1、T2強調画像にて中心部は低―高信号域の混合信号域(各時期のメトヘモグロビン)、そして周囲にはヘモジデリン環を示唆する低信号域を示す。Gd増強T1強調画像では均一に造影される。T2*、磁化率強調画像(SWI)も病変の描出に有用である。
診断の際の留意点
脳出血後の変化、脳腫瘍との鑑別が重要となる。時には間隔をおいて複数回MRIを撮影する必要がある。
治療
頭蓋内腫瘤摘出術(K167)
直線加速器による放射線治療 定位放射線治療(M001-3-1)
いずれも保険診療内で行える。
直線加速器による放射線治療 定位放射線治療(M001-3-1)
いずれも保険診療内で行える。
合併症
脳静脈性血管腫 脳動静脈奇形
予後
出血していない海綿状血管腫は無症状であるが、いったん出血した場合、場所や程度によっては麻痺や意識障害などの重篤な後遺症を残してしまう。年間出血率は0.7%程度で、出血した場合の再出血率は年4.5%程度とされている。
成人期以降の注意点
成人期においても、特に出血した既往がある例は、引き続き出血を来し症状が悪化する可能性がある。
参考文献
- 脳神経外科学 改訂12版、太田富雄 編、金芳堂
- 脳卒中治療ガイドライン2015
- Neurosurgery. 2017 ; 80(5):p665?p680 (Angioma Allianceによる系統的レビューに基づくガイドライン)
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2019年7月1日
- 文責
- :日本小児神経学会