1. 脈管系疾患
  2. 大分類: 脈管奇形
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クリッペル・トレノネー・ウェーバー(Klippel-Trénanay-Weber)症候群

くりっぺるとれのねーうぇーばーしょうこうぐん

Klippel-Trénanay-Weber syndrome

告示

番号:6

疾病名:クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

概念・定義

 クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は四肢のうち一肢又はそれ以上のほぼ全体にわたる混合型脈管奇形に、片側肥大症を伴った疾患である。混合型脈管奇形は胎生期における脈管形成の異常であり、複数の脈管成分(動脈・静脈・毛細血管・リンパ管)を有し、拡張・蛇行又は集簇した異常脈管の増生を伴う疾患である。
 本症候群の脈管奇形病変と片側肥大は生下時から幼児期に気づかれ、加齢・成長に伴って増悪する。片側肥大はほとんどが脈管奇形と同側に生じるが、まれに対側に生じる。脈管奇形は多臓器にまたがり辺縁不明瞭でびまん性に分布し、強い疼痛や潰瘍は難治性の傾向にある。凝固線溶系や血行動態にも影響を及ぼし、感染、出血や心不全などにより致死的な病態に至ることもある。
 病的過成長に対する根治的治療法は無く、骨軟部組織の肥大・過剰発育に対しては、下肢補高装具や外科的矯正手術や、病変切除などの減量手術などが行なわれる。脈管奇形に対してはその構成脈管により治療は異なる。弾性ストッキングによる圧迫、切除手術、硬化療法、塞栓術などが用いられるが、本症候群の巨大脈管奇形病変はこれらの治療に抵抗性であることが多く、生涯にわたる継続的管理を要する。

病因

脈管奇形は先天性であり、胎生期における脈管形成異常により生じた病変と考えられている。原因は明らかでないが、その一部として遺伝子変異が発見され、遺伝子治療や分子標的創薬の可能性が模索されている。家族内発生の報告はあるが、非常にまれである。病的過成長の原因は不明で、骨軟部組織の内在的(先天的)要因によるのか、脈管奇形による二次的変化なのか不明である。

疫学

発症率に男女差はない。初期は無症状のこともあり、症状を呈する半分以上は5歳未満で発症する。平成25年度に厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性血管腫・血管奇形についての調査研究班 患者実態調査および治療法の研究」による全国の医療施設を対象とした全国実態調査が行われ、198人の患者情報が集まった。その結果、日本でのクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の患者は約3000人と推測される。

臨床症状

四肢のうち一肢又はそれ以上のほぼ全体にわたる混合型脈管奇形と片側肥大が生下時ないしは幼児期に気づかれ、加齢・成長に伴って増悪する。混合型脈管奇形の症状には地図状のポートワインステイン、拡張した蛇行静脈、リンパ管機能不全による腫脹が挙げられる。片側肥大はほとんどが脈管奇形と同側に生じるが、まれに対側に生じる。合指(趾)症や巨指(趾)症などの指趾形成異常を合併することもある。脚長差が高度になると跛行や代償性脊椎側彎症を来す。疼痛、腫脹、潰瘍、発熱、感染、リンパ漏、出血、変色など、各脈管奇形の症状を呈する。本症候群の脈管奇形は、多臓器にまたがり辺縁不明瞭でびまん性に分布し難治性であり、感染や出血を頻繁に来す。低流速型では多くの場合で血液凝固能低下を来し、高流速型では血行動態にも影響を及ぼして心不全などによる致死的な病態に至りやすい。

検査所見

軟部・体表などの血管あるいは、リンパ管の異常な拡張・吻合・集簇など構造の異常から成る病変で、病変の脈管成分によって理学的所見や画像所見が異なる。各奇形の診断根拠となる所見を以下に述べる。

動脈奇形の診断は以下により得られる。
1.理学的所見
血管の拡張や蛇行がみられ、拍動やスリル(シャントによる振動)を触知し、血管雑音を聴取する。
2.画像検査
所見超音波検査、MRI検査、CT検査、動脈造影検査のいずれかにて動静脈の異常な拡張や吻合を認め、病変内に動脈血流を有する。
3.病理所見
明らかな動脈、静脈のほかに、動脈と静脈の中間的な構造を示す種々の径の血管が不規則に集簇している。中間的な構造を示す血管の壁では弾性板や平滑筋層の乱れがみられ、同一の血管のなかでも壁の厚さはしばしば不均一である。また、毛細血管の介在を伴うこともある。

静脈奇形の診断は以下により得られる。
画像検査上病変を確認することは必須である。2の画像検査所見のみでは質的診断困難な場合、1あるいは3を加えて診断される。
1.理学的所見
腫瘤状あるいは静脈瘤状であり、表在性病変であれば青色の色調である。圧迫にて虚脱する。四肢病変は下垂あるいは駆血にて膨満し、拳上あるいは駆血解除により虚脱する。血栓形成の強い症例などでは膨満や虚脱の徴候が乏しい場合がある。
2.画像検査所見
超音波検査、MRI検査、血管造影検査(直接穿刺造影あるいは静脈造影)、造影CTのいずれかで、拡張又は集簇した分葉状、海綿状あるいは静脈瘤状の静脈性血管腔を有する病変を認める。内部に緩徐な血流がみられる。内部に血栓や石灰化を伴うことがある。
3.病理所見
拡張した血管の集簇がみられ、血管の壁には弾性線維が認められる。平滑筋が存在するが壁の一部で確認できないことも多い。成熟した血管内皮が内側を覆う。内部に血栓や石灰化を伴うことがある。

リンパ管奇形の診断は以下により得られる。
生下時から存在し、以下の1、2、3、4の全ての所見を認め、かつ5の(a)、(b)又は(c)を満たす病変。
1.理学的所見 
圧迫により変形するが縮小しない腫瘤性病変を認める。
2.画像所見
超音波検査、CT、MRI等で、病変内に大小様々な1つ以上の嚢胞様成分が集簇性もしくは散在性に存在する腫瘤性病変として認められる。嚢胞内部の血流は認めない。
3.嚢胞内容液所見
リンパ(液)として矛盾がない。
4.除外事項 
奇形腫、静脈奇形(海綿状血管腫)、被角血管腫、他の水疱性・嚢胞性疾患等が否定されること
5.補助所見
(a)理学的所見
・深部にあり外観上明らかでないことがある。
・皮膚や粘膜では丘疹・結節となり、集簇しカエルの卵状を呈することがあり、ダーモスコピーにより嚢胞性病変を認める。
・経過中病変の膨らみや硬度は増減することがある。
・感染や内出血により急激な腫脹や疼痛を来すことがある。
・病変内に毛細血管や静脈の異常拡張を認めることがある。
(b)病理学的所見
肉眼的には、水様ないし乳汁様内容液を有し、多嚢胞状又は海綿状割面を呈する病変。組織学的には、リンパ管内皮によって裏打ちされた大小さまざまな嚢胞状もしくは不規則に拡張したリンパ管組織よりなる。腫瘍性の増殖を示す細胞を認めない。
(c)嚢胞内容液所見
嚢胞内に血液を混じることがある。

毛細血管奇形とは、いわゆる赤あざであり、従来単純性血管腫、ポートワイン母斑などと呼称されている病変であり、皮膚表在における毛細血管の先天性の増加、拡張を認め、自然消褪を認めない病変をさす。

診断の際の留意点

 超音波検査・MRI・血管造影などの画像検査では多彩な所見を示すため、診断は臨床所見によってなされることが多い。毛細血管奇形、静脈の異常(二次性静脈瘤を含む)、一肢の骨・軟部組織の片側肥大が古典的三徴であるが、静脈異常は小児期には明らかでないことが多い。
 鑑別診断として、血管あるいはリンパ管を構成する細胞等に腫瘍性の増殖がある疾患(イチゴ状血管腫、血管肉腫など)や明らかな後天性病変(一次性静脈瘤、二次性リンパ浮腫、外傷性・医原性動静脈瘻、動脈瘤など)がある。

治療

 病的過成長に対する根治的治療法は無く、骨軟部組織の過剰発育に対しては、下肢補高装具や外科的矯正手術(骨端線成長抑制術、骨延長術)が行われるが、治療の適応や時期などについては一定の見解がない。軟部組織の肥大については病変切除などの減量手術などが行なわれるが、病変はび慢性であり、完全切除は不可能である。
 脈管奇形に対してはその構成脈管により治療は異なる。弾性ストッキングによる圧迫、切除手術、硬化療法・塞栓術、レーザー照射などが用いられるが、本症候群の巨大脈管奇形病変はこれらの治療に抵抗性であることが多く、疼痛・感染・出血・凝固能異常などに対する対症療法を含めて生涯にわたる継続的管理を要する。

合併症

強い疼痛(関節痛)、繰り返す局所または四肢の感染(蜂窩織炎)、繰り返す出血、凝固能異常、歩行障害、整容障害など

予後

一般に成長と共に病変は増大する傾向にあり、時間経過に伴い成人後も進行する。塞栓術・硬化療法、切除術により、症状が改善することもあるが、治癒することは稀である。病変が一肢全体に及び治療が困難症例では、四肢などの機能・形態異常が進行すると社会的自立が困難となる。皮膚潰瘍は難治性であり、感染を繰り返す場合や動脈性出血を認める場合は致死的となる。

成人期以降の注意点

 脈管奇形全般において、①体重増加に伴って身体全体の血液量が増えたとき、②患部の血液の流れがうっ滞した場合、③感染を合併し急に病変が大きくなったりした場合に、病状が悪化することがある。
暴飲暴食を避け体重をコントロールする。性交時避妊を心掛け意図しない妊娠を避ける。適度に水分を摂取し脱水状態を避ける。弾性ストッキングを装着する。長時間足を動かさず同じ姿勢を維持することを避ける(長時間座るときは適度に足を動かす)。便秘を回避し長時間トイレでいきむことは避ける。患部の清潔を保つ。患部皮膚の保湿を心掛ける。通勤や通学などで長時間の歩行するときは運動靴を履く。などが注意点として挙げられる。
 病態と生活様式を考慮して医学的な指導を必要とする。

参考文献


  • 血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017. 平成26-28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症及び関連疾患についての調査研究」班 http://www.marianna-u.ac.jp/va/guidline.html
  • 国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA) http://www.issva.org/
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日