1. 骨系統疾患
  2. 大分類: 骨系統疾患
2

軟骨無形成症

なんこつむけいせいしょう

Achondroplasia

告示

番号:14

疾病名:軟骨無形成症

概念・定義

四肢短縮型の著しい低身長をきたす先天性の骨系統疾患である。四肢短縮は近位肢節により強くあらわれる。このほか、特徴的な顔貌(脳頭蓋が相対的に大きい、前額部の突出、鼻根部の陥凹、顔面正中部の低形成、下顎が相対的に突出)、三尖手(指は短く、伸ばすと中指と薬指の間が離れる)、下部腰椎の前彎が強いための臀部の後方突出が身体的な特徴である。古くは軟骨異栄養症と一括して呼ばれたが、現在は軟骨無形成症と、軽症の表現型をとる軟骨低形成症に細分されている。

病因

原因遺伝子は染色体領域4p16.3に存在するFGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3)である。遺伝様式は常染色体優性遺伝であるが、約80%以上は新規突然変異によるものとされ、健康な両親から生まれる。患者の98%にFGFR3のG380R点変異(380番目のグリシンがアルギニンに置換される変異)をみとめる。FGFR3の構造は、細胞外領域、膜貫通領域、細胞内領域(チロシンキナーゼドメインを含む)の3つの部分に分けられるが、本症の点変異は膜貫通領域に存在する。一方、同じFGFR3のチロシンキナーゼドメインに存在する点変異(N540K点変異が代表的)では軟骨低形成症となる。FGFR3のシグナルは軟骨細胞の増殖に対し抑制的に作用するが、本症の原因となる変異型FGFR3は受容体シグナルが恒常的に活性化される機能獲得型変異であり、軟骨細胞の分化が促進され内軟骨性骨化の異常をきたし長管骨の成長障害、頭蓋底の低形成などを生じると考えられている

疫学

およそ2万出生に1人の割合の発生で、本邦には約6000人の患者がいると推定される。性差はない

臨床症状

出生時から四肢短縮をみとめるが、出生身長はそれほど小さくない。成長障害の程度は加齢とともに強くなり、成長期の身長増加は大きくない。成人身長は男性で約130cm、女性で約125cmである。顔貌の特徴は出生時からみられる。乳幼児期(3歳頃まで)に問題になるのは、大孔狭窄および頭蓋底の低形成による症状である。大孔狭窄では延髄や上位頸髄の圧迫により、頚部の屈曲制限、後弓反張、四肢麻痺、深部腱反射の亢進、下肢のクローヌス、中枢性無呼吸がみられる。水頭症も2歳までに生じる可能性がもっとも高い。無呼吸、呼吸障害は中枢性と鼻咽頭狭窄による閉塞性の要因から生じる。胸郭の低形成が高度な場合、拘束性肺疾患や呼吸器感染症の反復、重症化も問題になる。中耳炎の罹患も多く、本症の約90%で2歳までに発症する。多くは慢性中耳炎に移行し、30~40%で伝音性難聴を伴う。脊柱管狭窄は小児期に生じることはまれであるが、しびれ、脱力、間欠性跛行、神経因性膀胱による排尿障害が症状である。脊椎彎曲、亀背、腰痛、下肢痛もしばしばみられる。乳児期に運動発達の遅延はあるが知能は正常である。このほか、咬合不整、歯列不整がみられる

診断

四肢短縮型の著しい低身長で、単純X線検査でみられる特徴的な所見から診断する

治療

本質的な治療はない。大孔狭窄による神経症状をていしたものでは減圧手術をおこなう。水頭症で明らかな頭蓋内圧亢進症状や進行性の脳室拡大をていしたものではシャント手術をおこなう。低身長に対しては成長ホルモン注射や創外固定を用いた四肢延長術などがおこなわれる。脊柱管狭窄症に対しては外科的減圧術(椎弓形成術や固定術)がおこなわれる

予後

積極的な医学的評価をおこなわない場合、乳幼児全体で約2~5%で突然死が生じる。突然死の原因はおもに無呼吸であると考えられている。大半が知能面では正常であり、平均余命も正常であるとされる

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会

成長ホルモン療法の助成に関して

低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。