1. 皮膚疾患群
  2. 大分類: 先天性魚鱗癬
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2から6までに掲げるもののほか、先天性魚鱗癬

そのた、せんてんせいぎょりんせん

Other congenital ichthyoses

告示

番号:9

疾病名:4から8までに掲げるもののほか、先天性魚鱗癬

概念・定義

 全身皮膚に様々な厚さの鱗屑、魚鱗癬を生じる遺伝性角化異常症。皮膚の発赤(潮紅、紅皮症)の程度は様々である。本疾患の主なものには【5.Netherton症候群】、【6.Sjögren-Larsson症候群】以外の魚鱗癬症候群が含まれる。魚鱗癬症候群は、重症の先天性魚鱗癬に加えて様々な他臓器症状を伴うものであり、皮膚科的な治療に加え、合併する臓器症状に応じて小児科、眼科、整形外科、精神科などの専門領域での対応も必要となる。
 代表的なものとして、KID症候群、Dorfman-Chanarin症候群、CHILD症候群、IFAP症候群などが知られている。KID症候群は常染色体優性遺伝性の疾患であるが、Dorfman-Chanarin症候群は常染色体劣性の遺伝形式の疾患であり、また、CHILD症候群、IFAP症候群は伴性劣性遺伝性の疾患である[1]-[5]。

①KID症候群(keratitis-ichthyosis-deafness syndrome)

 皮膚症状は多彩であり、乳頭腫状角化、もしくは先天性魚鱗癬様紅皮症を呈する。乳頭腫状角化は特徴的な細かい粒状、棘状の形態をとり、とくに手掌、足底で顕著である。それ以外にも毛孔性角化性、紅色性角化性丘疹、疣状局面などの皮膚症状を呈し、口囲亀裂、脱毛、乏汗症、爪変形、皮膚の易感染性もしばしば指摘されている。
 魚鱗癬症候群として、聴覚障害(感音性難聴)や角膜炎(血管増殖性角膜炎、羞明)を合併する[6]が、感音性難聴は9割の症例で重度の難聴を伴う。角膜の血管新生を伴う角膜炎では羞明を伴い、失明に至る例もある。
 本疾患は魚鱗癬症候群のなかではめずらしく常染色体優性遺伝性であるが、稀な疾患で多くは狐発例である。病因は細胞間チャンネルであるギャップ結合の構成成分であるコネキシン26をコードする遺伝子GJB2の変異による[7]。ただし、無毛を合併した症例では、コネキシン30をコードするGJB6の変異によることもある。
 本疾患では、皮膚に細菌、真菌、ウイルスなどの二次感染を繰り返す傾向があり、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス製剤などの十分なコントロールを受ける必要がある。また、皮膚癌、舌癌の合併例も報告されており、本疾患の予後と関連することがある[8]。

②Dorfman-Chanarin症候群 (Dorfman-Chanarin syndrome: neutral lipid storage disease)

 表皮だけではなく、肝、筋肉、眼、耳、中枢神経などの多臓器に中性脂肪が蓄積して障害をおよぼす先天性疾患であり、常染色体劣性遺伝形式をとる。主要症状として、先天性魚鱗癬、肝障害(肝硬変)、難聴、精神遅滞、運動失調、成長障害、白内障などがみられ、小耳症、難聴、精神発達遅滞、成長障害、白内障、斜視、眼振、筋力低下、運動失調などもみられる。白血球(顆粒球、単球)以外にも様々な臓器に細胞内脂肪滴が確認される[9]。  
 本疾患は常染色体劣性遺伝性であり、病因は、esterase/ lipase/ thioesterase subfamily に属する酵素である1-acylglycerol -3-phosphate O-acyltransferase (CGI-58)をコードする遺伝子ABHD5の変異により層板顆粒の形成不全と角層細胞間脂肪層の異常をきたし、魚鱗癬を生じると言われている[10][11]。
 全身の組織に脂質が沈着するにもかかわらず生命予後は比較的良好と言われている。

③CHILD症候群 (Congenital hemidysplasia with ichthyosiform erythroderma and limb defects syndrome)

 皮疹がモザイク状の分布を呈する先天性魚鱗癬様紅皮症であり、片側だけに皮疹が生じる。さらに患側の上下肢の短縮・欠損、患側の臓器障害、形成異常などの症状が加わる。病因タンパクの3βハイドロキシステロイドデヒドロゲナーゼをコードするX染色体上のNSDHL遺伝子の変異による。[4][5]

④IFAP症候群 (Ichthyosis-follicularis-atrichia-photophobia syndrome)

 無毛症、羞明をともなう毛包性魚鱗癬を特徴とする稀な伴性劣性遺伝性の疾患であり、脂質合成や小胞体ストレス反応を調節するMBTPS2の遺伝子変異により発症する。それ以外にも、低伸長、精神発達遅滞、痙攣、発汗低下などの症状を合併する。魚鱗癬の重症度は中等度で、主として臀部、大腿、膝に角化性病変がみられるが、掌蹠には通常はみられない [5]。

参考文献

1)池田志斈:先天性魚鱗癬様紅皮症(CIE)の臨床疫学研究.診断書と調査票の策定. 厚生労働科学研究費補助金. 難治性疾患克服研究事業(代表研究者 岩月啓氏). 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究.平成20年度総括・分担研究報告書; 100-102, 2009.
2) 澤村大輔、池田志斈、 鈴木民夫ほか.:皮膚疾患遺伝子診断ガイドライン(第1版). 日皮会誌:122: 561-573,2012.
3)稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班による2011年最新版.先天性魚鱗癬様紅皮症とその類縁疾患.
[医療者向けパンフレット]
http://knh.mond.jp/kinanwp/wpcontent/uploads/gyorinsen_info_m.pdf
[一般・患者さん向けパンフレット]
http://knh.mond.jp/kinanwp/wp-content/uploads/gyorinsen_info_q_a.pdf
[診断の手引きアトラス集]
http://knh.mond.jp/kinanwp/wp-content/uploads/gyorinsen_atlas2-4.pdf
4) 秋山真志:魚鱗癬・魚鱗癬症候群. 皮膚科セミナリウム 第10回角化症. 日皮会誌116: 1-9, 2006.
5)米田耕造:症候群に伴う魚鱗癬. 玉置邦彦ほか編. :最新皮膚科学大系 第7巻.角化異常性疾患. 中山書店 東京 2002, pp.103-127.
6) Skinner BA, Greist MC, Norins AL.: The keratitis, ichthyosis, and deafness (KID) syndrome. Arch Dermatol. 117 :285-289,1981.
7) Richard G1, Rouan F, Willoughby CE, et al.: Missense mutations in GJB2 encoding connexin-26 cause the ectodermal dysplasia keratitis-ichthyosis-deafness syndrome. Am J Hum Genet 70: 1341-1348, 2002.
8) Grob JJ, Breton A, Bonafe JL, et al: Keratitis, ichthyosis, and deafness (KID) syndrome. Vertical transmission and death from multiple squamous cell carcinomas. Arch Dermatol 123: 777-782, 1987.
9) Venencie PY, et al.: Ichthyosis and neutral lipid storage disease (Dorfman-Chanarin syndrome). Pediatr Dermatol 5:173-177, 1988.
10)Elias PM, Williams ML.: Neutral lipid storage disease with ichthyosis. Defective lamellar body contents and intracellular dispersion. Arch Dermatol 121: 1000-1008, 1985.
11) Akiyama M, et al.: Truncation of CGI-58 protein causes malformation of lamellar granules resulting in ichthyosis in Dorfman-Chanarin syndrome. J Invest Dermatol. 121: 1029-1034, 2003.
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児皮膚科学会