1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 総排泄腔異常症
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総排泄腔遺残

そうはいせつくういざん

persistent cloaca

告示

番号:20

疾病名:総排泄腔遺残

概念・定義

総排泄腔遺残症は、女児の直腸肛門奇形の特殊型で、尿道、膣、直腸が総排泄腔という共通管に合流し、共通管のみが会陰部に開口する特殊稀少難治性疾患である。総排泄腔は胎生6週に直腸と尿路に分離する組織であるが、この分離過程が障害され発生する。直腸肛門形成の他に膣形成が必要で、幼少期に手術された膣は、長期的に狭窄や閉鎖などの問題点が多く、思春期に入ってのブジーや膣口形成などの治療が必要となる。病型には、variationが多く、適切な治療には各症例の病態理解と経験が必要である。

疫学

総排泄腔遺残の頻度は、出生5万に1人とされ、過去20年間(1976-1995)の日本直腸肛門奇形研究会登録症例1992例の解析では、全体の4.7%(93例)であった。本症はvariationが多く、平成22年の全国集計では、124症例の88.5%に子宮奇形、49.4%に重複膣、84.5%に膣狭窄が認められ、そのパターンも多彩である。総排泄腔長が3cm以上の重症型は全体の約4割で、合併奇形の発生頻度も高い。泌尿器系では、腎欠損、水腎症、水尿管症、膀胱尿管逆流症、VURなどを合併する。

病因

泌尿生殖隔膜が総排泄腔を直腸と尿路に分離するが、魚類でWtip (WT-1-interacting protein)をknock-outすると、腎嚢胞や総排泄腔遺残が発生し、マウスでは、Shh-Wif1-β-catenin遺伝子カスケードに異常があると総排泄腔遺残が発生する。しかし、ヒトでの詳細な発生機序は不明である。

症状

直腸が総排泄腔に開口するため排便ができない。そのため生下時に横行結腸を用いた人工肛門造設する。尿道も総排泄腔に開口するが、総排泄腔を通じで排尿できる場合とできない場合があり、排尿障害が存在する場合は、膀胱瘻の造設が必要となる。また、胎生期から排尿障害が発生すると水膣症を合併し、胎便が腹腔に漏れ胎便性腹膜炎を合併し、腹腔ドレナージが生直後に必要となる。膣に関しては、放置すると思春期に月経流出路障害から、子宮・膣留血腫が発生するため、早期に一期的膣形成を行うか、膣の形成が不十分な場合は、思春期に直腸、小腸を用いた代用膣形成を行う。

治療

新生児期は、人工肛門を造設する。総排泄腔が3cm未満の場合、幼児期に一期的膣・肛門形成を行う。後矢状切開による肛門・膣形成の他に、膣の形成にはskin flapを用いた膣形成、TUM(Total urogenital mobilization)などがある。総排泄腔が3cm以上の場合は、膣が低形成の場合が多く、空腸や直腸を用いた代用膣作成を行う。早期に膣形成を行った場合は、膣孔狭窄予防のため継続した膣ブジーが必要である。

予後

本邦の全国統計調査では、膣形成後の長期的問題点として、月経流出路狭窄が41.4%に認められ、そのうち91.4%が急性腹症、65.8%に月経困難症を呈していた。術後排便機能は比較的良好で、約8割で禁制が保たれ、排尿機能も6割で良好な自排尿が獲得されている。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児外科学会