概念・定義
本症は新生児期から巨大膀胱、Microcolonを呈し、重篤なイレウス症状を来す疾患群Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome(以下MMIHS)であり、予後不良の先天性消化管疾患として知られている。多くは生命維持のために中心静脈栄養が長期にわたり必要であり、小腸移植の適応にもなり得る。
疫学
MMIHSの発症例は、本邦の2001-2010年の全国調査では確定診断例が19例でありその全例が新生児期に発症していた。
病因
多くは散発性に発症すると考えられており、いまなお原因不明である。病変部位は胃から肛門までの消化管全体にわたって認められる症例が多く、記載のあった16例中全例で回腸からS状結腸に病変を認めた。その他、空腸14例、直腸15例、その他胃・十二指腸7例、肛門4例に病変を認めた。
全層標本による病理学的検索は2001-2010年の全国調査では全例に行われていたが17例で筋層、神経に異常なしとされている。
症状
新生児期から発症し、腹部膨満と巨大膀胱を全例に認める。2001-2010年の全国調査の19症例の解析でも初発時の臨床症状としては 腹部膨満19例、巨大膀胱19例、胎便排泄遅延7例、嘔吐7例、その他に蠕動障害や水腎症を認めた。本疾患では、症候の有無が診断に直結することより、すくなくともMMIHSの診断が疑われ、症候がそろっている段階でほぼ全例が診断可能となる。
治療
診療方針については、中心静脈栄養、経腸栄養による栄養管理をおこないながら、うっ滞性腸炎に対する減圧手術を付加することが必要となる。減圧のための腸瘻の造設部位と時期について症例により検討を要する。腸管切除の是非についてはその効果は不明である。2001-2010年の全国調査の分析では16例で減圧のための腸瘻が造設されており半数以上にわたる11例が最終的に高位の空腸瘻となっていた。まだ臓器移植により救命できる可能性もあり、小腸移植や多臓器移植の対象疾患となるかどうかも今後の検討課題である。
予後
この疾患の多くが重症の経過をたどり、死亡率も高い。2001-2010年の全国調査19例では10例が生存、9例が死亡しており、5年生存率62.8%、10年生存率56.5%であった。生存中の9例中、7例で中心静脈栄養を施行されており、軽度から中等度の肝障害を認めていた。原因として静脈栄養とうっ滞性腸炎に起因する肝障害があげられており、この静脈栄養への依存度とその成否、消化管減圧の成否が予後を左右すると考えられる。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児外科学会