1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: クリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群
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クリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群

くりぐらー・なじゃーしょうこうぐん

Crigler-Najjar syndrome

告示

番号:18

疾病名:クリグラー・ナジャー症候群

概念・定義

 遺伝性の非抱合型高ビリルビン血症は、ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によるグルクロン酸抱合が障害されて起きるものと、グルクロン酸抱合後の肝細胞内での輸送の異常によって起きるものがある。前者のうち、血清ビリルビン値が30-50(mg/dl)と高値を示すものものがクリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群(CN) type I、6-20(mg/dl)であるものがtype II、1-5(mg/dl)程度までであるものがGilbert症候群(GS)である1

疫学

 CNはごく稀な疾患であり、重症型のtype I は1,000万人に1人程度と低頻度で、日本人での報告は4例あったという。Type IIも100万人に1人程度と稀である。一方、GSは人口の3.0-8.6%と高頻度である2

病因

 寿命に至った赤血球などからヘムが分解され排泄される過程でビリルビンを生じる。哺乳類ではビリルビンの80%がヘモグロビンに由来するという3。ビリルビンは疎水性が強く、肝細胞の小胞体にあるビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によってグルクロン酸抱合されて水溶性となって肝細胞外に排泄され胆汁となる。  CNではUGT1A1の活性欠損または低下によりグルクロン酸抱合されず胆汁から排泄されなくなった非抱合型ビリルビンが血中に増加する。非抱合型ビリルビンは有害で脂質豊富な中枢神経系に沈着し核の黄染をきたし、核黄疸に至る。

症状

 核黄疸(ビリルビン脳症)の症状は筋緊張低下、傾眠傾向、後弓反張、落陽現象、緩慢なMoro反射、甲高い泣き声、けいれんなどである。慢性化すれば筋緊張亢進、アテトーゼ、感音性難聴などが現れる。  (非抱合型の)ビリルビン値が35(mg/dl)を越えた10例中9例で死亡または重篤な後遺症をみた報告4がある一方、20(mg/dl)未満ではほとんど異常を認めない3

診断

 新生児期に発症する。血清総ビリルビンが高値だが肝機能の障害や溶血などビリルビン高値をきたす他の病態が除外されることが必要である。血液検査では肝機能障害による胆汁うっ滞では直接ビリルビン、血清総胆汁酸、トランスアミナーゼなど、溶血では血色素、網状赤血球数、ハプトグロビン、乳酸脱水素酵素(LDH)などの異常値に留意する。  CN type Iは間接型ビリルビンが20(mg/dl)以上、CN type IIは6-20(mg/dl)、GSは1-5(mg/dl)である。Type 1 とtype 2 の鑑別にはフェノバルビタール負荷試験が有用であり、type 1 では負荷後でもビリルビン値が変動しない。

治療

 重症型であるCN type 1 では新生児期の高ビリルビン血症を光線療法および交換輸血で乗り切ったのち、光線療法を継続し可能であれば肝移植を受ける。CN type 2 ないしGSは新生児期の高ビリルビン血症を光線療法などで治療した後は一般に治療を要さない。ただしCN type 2 でもフェノバルビタールの持続的内服を要する例がある。  非抱合型ビリルビンはアルブミンに結合しやすく、中枢神経毒性と血清ビリルビン/アルブミン比が関係する。CN type 1 ではアルブミン結合能の高いセフトリアキソン、イブプロフェンなどの薬物は投与を避ける3

予後

 CN type 1 の黄疸発作は予後不良であり、集中的な治療と発作回避が重要である。それ以外の予後は良い。

成人期以降の注意点

 肝移植例は終生にわたる免疫抑制療法を要し、感染に関連した拒絶や悪性新生物の発生に注意を要する。成人への移行期に免疫抑制療法を理解し受け入れ、自立して受診を継続できるよう援助・指導する必要がある。  非肝移植例は診断と光線療法などの対症療法を理解し受け入れ、受診を継続できるよう援助・指導する必要がある。

参考文献

  1. 丸尾 良浩, 27章 体質性黄疸. 日本小児栄養消化器肝臓学会編 小児栄養消化器肝臓病学, 2014. p. 494-496.
  2. Takeuchi, K., et al., Genetic polymorphisms of bilirubin uridine diphosphate-glucuronosyltransferase gene in Japanese patients with Crigler-Najjar syndrome or Gilbert's syndrome as well as in healthy Japanese subjects. J Gastroenterol Hepatol, 2004. 19(9): p. 1023-8.
  3. Bartlett M, Gourley G., Neonatal jaundice and disorders of bilirybin metabolism. Liver Disease in Children, Fourth Edition, ed. Frederick J. Suchy, et al. , 2014. p. 177-198.
  4. Ose, T., et al., Follow-up study of exchange transfusion for hyperbilirubinemia in infants in Japan. Pediatrics, 1967. 40(2): p. 196-201.
:バージョン2.0
更新日
:2015年6月1日
文責
:日本小児栄養消化器肝臓学会