1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 肝硬変症
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肝硬変症

かんこうへんしょう

Liver Cirrhosis

告示

番号:9

疾病名:肝硬変症

概念・定義

肝硬変は慢性肝疾患による肝細胞壊死が至る終末像である。病理学的に肝細胞の壊死と線維化による小葉改築、再生結節を呈する。肝臓の循環障害と肝細胞の極端な減少が基本的病態である。

疫学

小児での大規模な疫学調査は行われていない。小児慢性特定疾患事業で平成20年に登録された胆道閉鎖症、肝硬変など肝硬変が疑われる小児は約2000名であった。

病因

小児期の病因は成人と異なり、胆道閉鎖症が最も多く、小児の肝移植例の約半数を占めている。その他の家族性進行性肝内胆汁うっ滞症、原発性硬化性胆管炎などの胆汁うっ滞性疾患、Wilson病、チロシン血症、ガラクトース血症などの先天性代謝異常症、ウイルス肝炎ではB型肝炎ウイルス感染などが肝硬変の原因となりうる。

症状

代償性肝硬変は肝機能が比較的保たれており、自他覚的症状は認めない。  非代償性肝硬変の主要症状は成長障害、易疲労性、低栄養である。身体所見は肝腫大(主に左葉)あるいは肝萎縮、脾腫、手掌紅斑、クモ状血管腫、腹壁皮静脈怒張、女性化乳房、羽ばたき振戦などがある。

診断

症状、身体所見、検査所見を総合的に診断する。重症度はChild-Pugh分類で判定する。

検査所見

  1. 血液検査 以下のいずれかをみることが多い。
    AST/ALT ≧ 1、ZTT・γグロブリン高値、アルブミン 3.5 g/dL 以下、血糖値の異常、アンモニア値の上昇、ICG 15分停滞率 ≧ 25%(小児では実施困難、もしくは工夫を要する)、PT・HPT の低値、ヒアルロン酸 ≧ 200 ng/mL、血小板10万以下、AST to Platelet Ratio(APRI)(AST測定値/施設の基準値)× 10 ÷(血小板数(万/mm3))が2.0以上。
  2. 画像検査(超音波、CT、MR)以下のいずれかをみる。
    肝辺縁の鈍化、肝左葉腫大、脾腫、側副血行路の存在、鋸歯状又は逆行する門脈血流、肝実質の不均一、肝表面の不整(7.5MHz以上の高周波探触子の使用が望ましい)、超音波による肝弾性に関する非侵襲的マーカーの異常
  3. 上部消化管内視鏡による食道・胃静脈瘤の検出、もしくは hypertensive gastropathy の検出。
  4. 腹腔鏡もしくは開腹所見
    肝辺縁の鈍化、肝左葉腫大、脾腫、側副血行路の存在、肝実質の不均一、肝表面の不整
  5. 組織所見(腹腔鏡下または開腹して得られた検体は偽陰性が少ない)
    小葉構築の改変、再生結節の存在、動脈の発達

治療

続発する合併症に対する対処療法が主となる。

栄 養:
高蛋白食(2 g/kg/日)、高糖質、高ビタミン食とするが、胆汁うっ滞があれば低脂肪食、中鎖脂肪投与を行う。肝性脳症急性期には厳重な蛋白制限が必要である。
薬物療法:
胆汁うっ滞があれば利胆薬、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の投与を行う。 非代償性肝硬変で浮腫や腹水が認められる場合には塩分制限を行い、低蛋白血症があればアルブミン、利尿薬投与を行う。 肝不全徴候が顕在化してくれば分岐鎖アミノ酸製剤を投与する。 消化管出血についてはヒスタミン H2 ブロッカー投与、内視鏡的効果療法などで対応し、 大量出血の場合は Sengstaken-Blakemore チューブによる止血を試みる。
肝移植:
現時点では肝不全が進行した場合の唯一の治療法である。 本邦では生体肝移植が主流であるが、臓器移植法改正後、徐々に脳死肝移植が増えてきている。

予後

長期的には徐々に肝不全が進行することが多く、予後不良で、最終的には肝移植を余儀なくされることが多い。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児栄養消化器肝臓学会