1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 肝内胆汁うっ滞性疾患
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先天性胆道拡張症

せんてんせいたんどうかくちょうしょう

congenital biliary dilatation

告示

番号:15

疾病名:先天性胆道拡張症

概念・定義

先天性胆道拡張症は肝内胆管や肝外胆管もしくは両方が拡張する病態である。病因は先天的な要因が考えられ、小児に多く、稀に成人にも見られる。典型的なものは著しい総胆管拡張があり、嚢腫状の拡張を示すことより、総胆管嚢腫とも呼ばれる。

疫学

日本膵・胆管合流異常研究会による全国集計によると、男性に比べて約3倍女性に優位に発症し、特に20代までの若年女性に多い。正確な人種別での発生頻度は不明であるが、日本、中国、韓国からの報告が多く、欧米に比べ東洋人に発生頻度が高い。
この疾患の分類としては古くからAlonso-Lejの分類が用いられてきたが、最近ではこれが改良された戸谷分類がよく使用されている。戸谷分類では総胆管が限局的に拡張するIa型とIc型、肝内と肝外胆管が拡張するIVa型は頻度が高く、ほぼ全例に後述する膵・胆管合流異常を合併する。一方他の型は低頻度で膵・胆管合流異常を伴っていないのが普通である。近年我が国ではいわゆる狭義の先天性胆道拡張症は膵・胆管合流異常によるIa型、Ic型、IVa型を意味することが多い。

病因

病因は、Babbittにより膵・胆管合流異常との密なる関係が指摘された。
膵・胆管合流異常の定義は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の奇形をいう。すなわち、機能的に十二指腸乳頭括約筋の作用が合流部に及ばないため膵液と胆汁との相互混入が起こり、胆道および膵臓に色々な病態を引き起こすものとされている。あくまでも先天的なものであり、後天的な要因によるものは除外する。
膵・胆管合流異常の発生機序は解明されていないが、胎生4週頃までに起こる腹側膵の形成異常とする説が有力視されている。また胆道拡張は原腸の内腔形成機序に関連しているとする説が有力とされている。しかし両者の発生機序に関しては様々な説が存在する。

症状

本症の三徴として右上腹部腫瘤、黄疸、腹痛があるが、三徴が揃うことは20〜30%くらいである。乳幼児では発熱、食欲不振、嘔吐、下痢などを訴えることも多い。
症状は胆汁うっ滞による腹痛、上腹部腫瘤、黄疸、便色異常、胆道系の細菌感染による発熱、膵炎による腹痛、発熱および嘔吐である。本疾患では稀に胆道穿孔による胆汁性腹膜炎を引き起こすが、膵・胆管合流異常に伴う胆管壁の脆弱性、胆道内圧の急激な上昇、膵液の胆道への逆流による刺激などが関与していると考えられる。
検査所見としては、胆汁うっ滞にともなうビリルビン、AST、ALTおよびガンマGTP値などいわゆる肝機能検査値の上昇および血清アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼIなどの膵酵素の上昇が認められることがある。
腹部超音波検査では肝外および肝内胆管の拡張が確認できる。近年膵・胆管合流異常研究会より腹部超音波検査における小児胆管正常径が提示された。
膵・胆管合流異常の同定は本疾患の確定にあたり非常に重要である。検査方法としては内視鏡的逆行性膵管胆道造影(ERCP)やMRIによる胆道描出法(magnetic resonance cholangiopancreatography; MRCP)がある。

治療

治療には外科手術が必要である。術式は拡張した肝外胆管の切除、胆汁と膵液との流路の分離(分流手術)を原則とする。再建方法は肝管空腸吻合術あるいは肝管十二指腸吻合術がある。拡張胆管が遺残した場合に晩期合併症として遺残胆管からの発がんの報告があり、拡張した肝外胆管は全切除することが望まれる。また肝管あるいは肝内胆管の狭窄がある場合に、胆管炎や結石形成の原因となることがあり、可能な限りで狭窄を解除するように努めるべきである。

予後

予後は元来良好とされていた。しかし近年、長期経過例における晩期合併症として胆管炎や肝内結石、遺残胆管癌、膵石、膵炎などが認められることが明らかとなってきた。
胆管炎や肝内結石は吻合部狭窄、肝内胆管狭窄、肝内胆管拡張の遺残による胆汁うっ滞が原因であることが多い。特に肝内胆管拡張のあるIV-A型に多く、肝内結石は10%前後の発生頻度と考えられている。
嚢胞切除後の急性あるいは慢性膵炎は膵内遺残胆管、拡張した共通管、複雑な膵管形態、膵管癒合不全などを原因とする。
遺残胆管癌は近年、その報告が散見されており、経過観察において注意を要する病態である。

参考文献

日本膵・胆管合流異常研究会、日本胆道学会 編. 膵・胆管合流異常診療ガイドライン pp1-84
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児外科学会・日本小児栄養消化器肝臓学会