1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 肝内胆汁うっ滞性疾患
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胆道閉鎖症

たんどうへいさしょう

biliary atresia

告示

番号:16

疾病名:胆道閉鎖症

概念・定義

本疾患は新生児から乳児期早期にかけて肝外胆管が破壊され、または消失するために閉塞性黄疸を来す疾患である。患児の肝外胆管は生来あるいは生後まもなくから完全閉塞を来たし,放置すれば胆汁性肝硬変へと進行して死に至る。救命のためには外科的手術が必須である。

疫学

出生9,000〜10,000人に一人の発生頻度とされている。しかしその頻度には地域差、人種差があることも知られている。男女比は0.6対1と女児に多く発生している。欧米では従来、肝門部胆管と腸管との吻合の可否により、吻合可能型と吻合不能型とに分類する方法が一般的であったが、わが国ではさらに詳細な分類を行うための病型分類が用いられている。この中では、肝外胆管の閉塞部位により、IおよびIcyst型(総胆管閉塞型)、II型(肝管閉塞型)、III型(肝門部閉塞型)の基本病型に分類される。III型が約85%と最も多い病型で、次いでIおよびIcyst型、II型となる。
遺伝性は明らかではなく、合併奇形の頻度は全体では約10%程度である。特に頻度の高い合併奇形としては、脾臓の異常(多脾症候群や無脾症候群)、心大血管奇形、十二指腸前門脈、内臓逆位症、腸回転異常症などがある。

病因

本疾患の病因として確定したものはないが、先天的な発生異常より一旦形成された胆管が何らかの機転で二次的または続発性に閉塞することが主体と考えられている。これまで様々な病因が想定されていて、主なものとして、ductal plate malformation説、ウィルス感染説、免疫異常説、母体細胞キメラ現象(maternal microchimerism)説、胆汁酸代謝異常説、膵管胆道合流異常説、血行障害説などがある。

症状

本疾患は新生児から乳児期早期に発症し、その病態は進行性である。
本疾患の主な症状は生後14日以降も持続する黄疸、灰白色ないし淡黄色便、褐色尿、肝脾腫大である。便色異常は本疾患に最もよく見られる症状の一つであり、これを肉眼的に評価するツールとして平成24年度から母子健康手帳に便色カードが添付され活用されている。胆道閉鎖症の胆道閉塞は進行性と考えられており、当初は正常の便色と区別が困難である場合も見られるが、生後2ヶ月、3ヶ月と経過するに従い、灰白色ないし淡黄色の便色を呈するようになる。
尿の黄色調が濃くなるのは閉塞性黄疸に伴うビリルビン尿であり、閉塞性黄疸の症状の一つである。
また胆汁うっ滞に伴い、脂溶性ビタミンの吸収障害を伴う場合にはビタミンK欠乏性凝固障害を来たし、出血症状を来す症例が約10%ある。出血部位としては頭蓋内、消化管、皮下が多く、頭蓋内出血を来した場合には、神経学的後遺症が残る可能性もある。
検査所見としては、血清総ビリルビン値の上昇、直接型ビリルビン値の上昇(1.5 mg/dl以上)、直接型対総ビリルビン比(D/T比)20%以上、AST、ALTおよびガンマGTP値などいわゆる肝機能検査値の上昇、リポプロテイン-X陽性等、検査値の異常を認める。
また腹部超音波検査では肝門部の高エコー像(triangular cord sign)や胆嚢萎縮像などが見られる。
確定診断には肝外胆管の直接造影所見と肉眼的所見の確認が必須である。

治療

治療には外科手術が必要である。その主要な選択肢は胆道閉鎖症手術(肝門部腸吻合術いわゆる葛西手術または肝管腸吻合術)と肝移植術である。
胆道閉鎖症の病型に応じて、胆道閉鎖症手術の術式は選択される。肝内胆管から肝外胆管までの連続性が確保され、且つ肝外胆管が吻合可能な太さが認められる症例では肝管腸吻合術が選択されることがあるが、その頻度は5%ほどである。多くの症例では肝門部腸吻合術が選択される。本法は閉塞肝外胆管を切除後に肝門部の結合織切離面に存在する微小胆管から流出する胆汁を、肝門部に縫着した腸管内腔に開放するものである。従って肝門部の切離は必ず微小胆管の存在する適切な部位で行われなければならない。
胆道閉鎖症手術術後には、十分な利胆を確保するための各種薬物療法、胆管炎防止、門脈圧亢進症対策などが長期間の自己肝生存のためには必要である。
初回手術時にすでに非代償性肝硬変に陥っている症例や胆道閉鎖症手術で黄疸が消失しない例、一旦黄疸消失が得られても、持続的に黄疸が再発する症例、重篤な合併症や続発症を認める例には肝移植術が選択される。

予後

日本胆道閉鎖症研究会の集計によると、胆道閉鎖症手術1年後の患児の容態は黄疸なし自己肝生存が約57%、黄疸あり自己肝生存が約11%、肝移植生存が約26%、死亡が約4%である。ただし胆道閉鎖症手術による黄疸消失率は手術日齢と関連があり、生後30日以内では約7割が消失するのに対して、生後120日以降の症例では約4割、生後150日以降の症例では約2割の黄疸消失率にとどまる。
黄疸の持続する症例はやがて胆汁性肝硬変から肝不全となって、肝移植をしなければ死亡する。胆道閉鎖症手術後黄疸消失例では胆管炎や、門脈圧亢進症に伴う食道・胃静脈瘤破裂等による消化管出血、脾機能亢進症、肝肺症候群などの続発症に注意が必要である。そうした続発症の発症がないあるいはコントロールが良好な症例で、健常児と変わらない生活の質を得て、20歳以上に達する患者も近年増加している。しかし成人に達してから、肝病態が悪化して最終的に肝移植を要する症例も見受けられ、継続的な経過観察が必要である。
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児外科学会・日本小児栄養消化器肝臓学会