1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 免疫性肝疾患
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原発性硬化性胆管炎

げんぱつせいこうかせいたんかんえん

Primary sclerosing cholangitis; PSC

告示

番号:42

疾病名:原発性硬化性胆管炎

概念・定義

 原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis, PSC)は肝内外の胆管に線維性狭窄と拡張を生じる、原因不明の疾患である。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease, IBD)を合併することが多く、免疫異常や遺伝的素因の関与が推定されている。特に小児では自己免疫現象が強くみられ、自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis, AIH)との鑑別が難しい症例や、自己免疫性肝炎との合併例もみられる。

疫学

 平成18-21年度の小児慢性特定疾患「原発性硬化性胆管炎」(慢性消化器疾患分野)の申請者は新規・更新を合わせて年間18-25名であった。
 難治性疾患克服研究事業では、2007年、主に成人を対象とした疫学調査を実施し、日本の総患者数は約1,200人と推定されているが、小児の患者数は不明である。

病因

 炎症性腸疾患を合併することが多いことから,PSCの病因として、腸粘膜における防御機構の破綻に由来する門脈菌血症や門脈エンドトキシン血症、遺伝的異常などから発症するとの仮説があるがいずれも証明されていない。小児のPSCはAIHとの鑑別が困難な症例やAIHとの合併例が多く、成人のPSCとは異なる病因・病態が推測されている。

症状

 小児では、多くは無症状で、偶然の機会になされた血液検査で肝機能異常を指摘され、診断に至ることが最も多い。IBDに由来した、腹痛、下痢、血便、発熱などが初発症状のこともある。進行すると、黄疸、倦怠感、食道静脈瘤からの出血などがみられる。。IBDの合併頻度は欧米では、成人、小児ともに70~80%程度である。本邦成人のIBD合併率は40~50%程度とされるが、小児では80%以上にIBDを合併する。

診断

 診断の詳細は難病情報センターの疾患概要を参照されたい(難病情報センター:原発性硬化性胆管炎)。
 磁気共鳴胆管造影(MRC)や直接胆道造影で特徴的な形態がみられ、胆道系酵素の上昇を認め、IgG4関連硬化性胆管炎をはじめ各種の二次性硬化性胆管炎を除外できることで診断する。小児ではアルカリフォスファターゼ(ALP)は生理的に高値であり、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)を診断に用いる。肝組織は診断に重要であり胆管周囲の層状線維化(onion-skin fibrosis)が特徴的とされるが、すべての症例に認められるわけではない。胆道造影が診断には必須であるが、病初期にはMRCでは病変を描出できない事があるため、内視鏡的逆行性胆道造影を行うことが望ましい。

治療

 現在、有効な内科的治療はない。胆管の狭窄病変や胆石症合併などに対して、内視鏡治療や外科的治療が行われることがあるが、効果は限局的であり、進行すると肝移植が必要となる。
 ウルソデオキシコール酸(UDCA)の投与により肝胆道系酵素が正常化する症例があるが、予後を改善するかどうかは不明である。AIH合併例では副腎皮質ホルモンの併用も考慮するが、AIHによる炎症には効果があるが、胆管病変には効果がない。病期が進行し、黄疸がみられる症例では脂溶性ビタミン(ビタミンA, D, E, K)補充を行う。門脈圧亢進による食道静脈瘤に対しては内視鏡治療を行う。最終的には肝移植が必要となるが、再発が問題となる。特に親族からの生体肝移植では高率に再発するため、移植の際は脳死ドナーからの移植を行う。

予後

 長期的には胆汁性肝硬変から肝不全に至る予後不良な疾患であるが、肝移植をしても再発が問題となり、課題は多い。

成人期以降の注意点

 合併する炎症性腸疾患、胆管炎、胃食道静脈瘤などにより生活の質を保つことが妨げられやすい。成人に移行するにあたって、診断と治療を理解し受け入れ、自立して受診を継続できるよう援助・指導する必要がある。

参考文献

  1. 難病情報センター:原発性硬化性胆管炎(http://www.nanbyou.or.jp/entry/3968)
  2. 小松 陽樹, 乾 あやの, 十河 剛.原発性硬化性胆管炎.『小児内科』『小児外科』編集委員会共編:小児疾患診療のための病態生理1 改訂第5版.小児内科 46巻増刊 2014年.p. 674-678.
:バージョン2.1
承認日
文責
:日本小児栄養消化器肝臓学会