1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 炎症性腸疾患(自己免疫性腸症を含む。)
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クローン(Crohn)病

くろーんびょう

Crohn disease

告示

番号:2

疾病名:クローン病

概念・定義

消化管の肉芽腫性炎症性腸疾患で、主として若年者に発症し、終末回腸と大腸の罹患が最も頻度が高いが、口腔から肛門までのどの部位にも発生する。炎症は急性または慢性の経過をたどり、寛解と再発を繰り返す。腸粘膜から腸管全層に波及する炎症性病変を特徴とし、浮腫や潰瘍病変が斑状にまたは線状に発生し、腸管狭窄や瘻孔などの特徴的病変を生じる。粘膜固有層にTNF-αを産生する細胞が増加しており、炎症性サイトカインの過剰分泌により炎症が惹起される。

疫学

英国北部での年間罹患率は成人10万人に145人、スコットランドでは成人10万人に157人とされ、台湾での過去20年間の統計では小児10万人に13.2人から25.4人に増加し、最近の米国の統計でも小児10万人に58人と増加している。20歳未満発症が30%である。小児の発生頻度は小児10万人に1-4.9人で、潰瘍性大腸炎より発生頻度が高い。米国や北西ヨーロッパでの発生率が高く、アジアでの発生率は低いが、近年増加傾向が認められている。成人発症に比べ、小児期発症はより重篤とされ、小児でも10歳未満発症はさらに重篤で、近年増加傾向にある。

病因

遺伝的素因、免疫応答異常、環境因子が病因として考えられている。成人発症では、CARD15(NOD2)遺伝子異常が発見されているが、白人における小児発症では1割程度に異常が認められるのみで、遺伝子異常がある場合は、回腸病変で、狭窄病変の発生頻度が高く、外科治療をうける割合が高い。また、小児発症では、遺伝的伝達度が高くなるとされ、症例間での免疫応答の多様性も指摘されている。

症状

小児では、診断時に広汎な腸管病変を有することが多く、小児の6割は回腸病変で、肛門部や口腔病変も認められる。腹痛、下痢、血便を主症状とし、摂食障害と食欲不振のため、診断時に85%で体重減少が認められ、15-40%に成長障害が存在する。食欲不振の原因としては、腸管粘膜より分泌されるTNF-αやIL-6の食欲低下作用も関与している。これらの液性因子と摂食障害による栄養不良のため、成長障害が発生し思春期発来が遅れる。栄養素の欠乏として鉄やビタミンD欠乏の頻度が最も高く、脂溶性ビタミン、ビタミンB12、亜鉛、セレン欠乏も発生する。骨発達障害のため骨折をおこしやすくなる。小児の25-40%は、腸管外病変として結節性紅斑、壊疽性膿皮症、強直性脊椎炎、関節炎、肝炎、硬化性胆管炎、膵炎、腎結石、ぶどう膜炎、上強膜炎を併発し、肛門部膿瘍や瘻孔も15%程度に発生する。その他の合併症として腹腔内膿瘍形成がある。

治療

現在完全寛解を来す治療法はなく、寛解を維持しながら栄養障害を予防し、成長を阻害しないことを治療目的とする。主な治療法として経腸栄養剤による栄養療法、薬物治療、外科治療にわかれる。成人では、栄養療法はステロイド治療より有効性が低いが、小児では寛解率に差がなく第一選択となる。
経腸栄養剤による栄養療法は、その程度により補助的経腸栄養、部分経腸栄養、完全経腸栄養に分類される。部分経腸栄養とは、必要カロリーの10-20%を普通食から摂取し、ほとんどのカロリーを経腸栄養剤にて補うもので、補助的経腸栄養は、経腸栄養剤を500-1000mlを普通食に加えて補給するものである。完全経腸栄養は炎症極期に用いられるが、投与期間、用いる経腸栄養剤、補助的栄養法、投与法などには多くのパターンがある。経腸栄養法により90%で6週以内に寛解が得られている。
薬物治療では、5-ASA 製剤、抗生剤、ステロイドがあり、免疫調節薬(アザチオプリン・6-MP)はステロイドの減量や離脱に有用である。成人で通常の治療に抵抗性の場合に、infliximab(抗TNF抗体)が用いられ、小児ではステロイド抵抗性のものに適応され、効果に乏しい場合はadalimumabが用いられる。免疫調節薬とこれら生物学的製剤との併用は、若年男子でhepatosplenic T cell lymphomaなどの悪性腫瘍の発生が報告され、注意を要する。
20%の小児に外科治療が必要となり、人工肛門造設や小腸・大腸切除が行われる。
近年は、Fast-track managementとして、早期で適切な周術期管理のために、ドレーンは留置せず、早期に摂食を開始し、鎮痛剤の使用を極力抑え、より侵襲の少ない管理が心がけられている。

予後

細菌に対する各種抗体価が上昇し免疫応答が亢進している症例は、経過が急性で外科治療が必要な予後不良群とされている。肛門部病変を有する症例も外科治療の適応が高いとされている。外科治療群を含めて成長障害の改善は良好とされている。
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児外科学会・日本小児栄養消化器肝臓学会