1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 炎症性腸疾患(自己免疫性腸症を含む。)
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潰瘍性大腸炎

かいようせいだいちょうえん

Ulcerative colitis

告示

番号:1

疾病名:潰瘍性大腸炎

概念・定義

主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異的炎症で、30歳未満の成人に好発するが小児や50歳以上の成人にも発症する。血性下痢を来たし、悪性腫瘍の発生母地となる。小児は進行が早く、重篤な全大腸炎型に移行しやすく、ステロイド抵抗性が多い。近年増加傾向にある。

疫学

米国での成人10万人あたりの罹患率は238人、小児10万人あたり28人とされ、最近の報告では34人と若干増加している。20%が20歳未満で発症し、小児の平均発症年齢は10歳である。北米成人の発生頻度は10万人に10-12人で、小児では10万人に0.5-4.3人である。米国、カナダ、英国で発生頻度が高い。アジアでは近年増加傾向にある。

病因

遺伝的素因、感染、環境因子の他に、ストレス、宿主免疫機構、腸管内細菌叢、食物アレルギー、過敏性などが因子としてあげられている。食物アレルギーが原因とされているが、牛乳、穀物、日常食料、ある種の脂肪製品などの摂食制限は、適切な栄養指導がなければ逆に栄養状態の悪化をまねく。アジア人において、TNF promoter polymorphismが発生に関与しているとの報告がある。

症状

大腸の炎症による発熱、腹痛、下血、食欲不振を主症状とし、診断時に体重減少が65%に認められる。鉄欠乏性貧血も高頻度に存在する。症状は非特異的で、腸炎との鑑別が必要なため便培養による起炎菌の同定、内視鏡検査による生検標本病理診断が必要である。小児では、陰窩膿瘍や陰窩炎は認められるものの、広汎な組織破壊は軽度とされている。病変部位は、成人では直腸が11%、直腸S状結腸が25%、19%が脾湾曲部、45%が全大腸であるが、小児は全大腸炎型に移行しやすい特徴がある。

治療

小児の急性期は、低栄養や脱水補正のための全身の集中治療をまず行う。薬物治療では、5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬(アザチオプリン、6-MP、シクロスポリン)、抗TNF抗体が用いられ、白血球吸着療法も近年試みられている。本邦の小児潰瘍性大腸炎の治療ガイドラインでは、軽症例は5-ASA製剤を用い、中等症から重症例ではステロイドが第一選択であるが、45%がステロイド依存性となり、29-34%がステロイド不応性となる。ステロイド副作用としての成長障害を予防するため長期間連続使用はひかえ、寛解維持には用いない。ステロイドPulse療法も用いられている。再発例には、免疫調整薬が追加される。
外科治療の適応は、薬剤不応、高度の下血、toxic megacolon、大腸穿孔である。小児で低アルブミン血症、体重減少、家族歴、免疫抑制剤の使用が必要であった症例では早期に外科治療が必要になるとされている。成人の30%、小児の20-30%が外科治療例であったが、近年減少している。手術では、直腸大腸切除、回腸嚢肛門吻合が多段階手術として行われる。

予後

治療抵抗性の潰瘍性大腸炎では、直腸大腸切除、回腸嚢肛門吻合により患児のQOLを健常人と同程度にまで改善することができる。術後合併症としては、便による下着汚染が30-54%、回腸嚢炎が30%に認められている。術後の回腸嚢炎は血清アルブミンやヘモグロビンが正常の場合、発生率が低い。PUCAI(Pediatric UC activity index)は、CRPよりも予後予測に有用とされ、軽症例では術後の内視鏡検査を省くことができると報告されている。成人において大腸癌の発生は全大腸炎型で5.4%、20年の経過で2.5%とされ、長期経過例においては大腸内視鏡による長期フォローが重要である。
:バージョン1.0
承認日
文責
:日本小児外科学会・日本小児栄養消化器肝臓学会