1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 難治性下痢症
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腸リンパ管拡張症

ちょうりんぱかんかくちょうしょう

Intestinal Lymphangiectasia

告示

番号:27

疾病名:腸リンパ管拡張症

概念・定義

1961年にWaldmannらにより提唱された疾患概念である。腸管壁内のリンパ管内圧が亢進し、リンパ管の拡張や破綻をきたす。その結果、リンパ液とともに蛋白成分が腸管内へ漏出し低蛋白血症をきたす。

疫学

原発性腸リンパ管拡張症は通常、主に小児および若年成人にみられる。男女の罹患比はほぼ同等である。

病因

原発性の要因として、リンパ管の先天的形態異常(リンパ管形成不全、胸管の閉塞)がある。続発性の要因として静脈圧あるいは門脈圧の上昇(ことにFontan手術、右心不全、肝硬変)、リンパ管周囲からの圧迫による機械的狭窄あるいは閉塞(悪性腫瘍、感染症、膠原病、後腹膜線維症など)がある。

症状

しばしば非対称性の全身性の浮腫を認める。蛋白漏出性胃腸症と同様に下痢、嘔吐、腹満(腹水貯留)を認める。特徴的なのは、乳び胸水・腹水である。乳び中には蛋白、脂肪とともに多くのリンパ球が含まれているため、低γグロブリン血症やリンパ球減少により二次性の免疫不全状態をともなう。

診断

内視鏡検査で小腸に散在する白斑がみられることが多い。病理組織学的には腸絨毛の先端にリンパ管拡張を認める。血液検査では、低タンパク血症、凝固因子の低値、リンパ球減少を認める。便中α1アンチトリプシンクリアランスの亢進は腸管内への蛋白漏出を証明するよい指標となるため測定が望ましい。リンパ管シンチグラフィーは、感度・特異度ともに劣るため、参考にとどめた方が良い。

治療と予後、成人以降の注意点

原因となる基礎疾患の治療を行う。蛋白漏出に起因する症状に対しては、経静脈的にアルブミンや免疫グロブリンの補充などを行う。食事は低脂肪・高蛋白食とし、リンパ管内圧の上昇を抑えるために脂質の補充には中鎖脂肪酸(MCT)を用いる。経静脈的に必須脂肪製剤、Ca製剤および脂溶性ビタミンの補充を行う。予後は基礎疾患の重症度や治療に左右される。原発性のリンパ管形成異常やFontan術後例では長期間にわたって治療を必要とする難治例が多い。特にFontan術後例の死亡率は診断後5年で40%強と予後不良である。
:バージョン1.1
更新日
:2015年4月6日
文責
:日本小児栄養消化器肝臓学会