概念・定義
先天性のアミラーゼ欠損症は、膵アミラーゼ分泌能の成熟遅延が原因とされている。一般的には多糖類の吸収が阻害されることで、発育障害やでんぷん顆粒を混じた発酵性の下痢をきたす。リパーゼやトリプシンなど他膵酵素の活性低下を合併するものが多い。一方、家族内発生を認めた膵アミラーゼ単独欠損症の成人例が報告されており、稀ではあるが永続的な膵アミラーゼ欠損症も存在する。
病因
成人例での膵アミラーゼ欠損症は、家族歴を有することから遺伝的要因が関与すると考えられる。
症状
通常、膵アミラーゼ活性は生後3か月まではほとんど認められず、1歳で成人の1/4、2歳で1/2、5~10歳で9/10、10~15歳で成人値に達する。本症では膵アミラーゼ分泌能の成熟が遅延するため、人工乳や離乳食の負荷による消化不良便に始まり、特に他の膵酵素活性低下を合併する場合は体重増加不良を認めることもある。加齢とともに膵アミラーゼ活性は上昇する。成人例では便秘、軟便(脂肪性下痢)などを認めるが、無症状のこともある。
診断
血中膵アミラーゼ活性に加え、十二指腸液採取による膵アミラーゼ活性を測定する。経口的にでんぷんを投与(50g/m2)しても血中グルコースの上昇を認めない(でんぷん負荷試験)。便クリニテストは陽性を示す。
治療と予後、成人以降の注意点
でんぷん除去食とし、糖質としては二糖類や単糖類を与える。リパーゼやトリプシン活性低下を合併する乳幼児例では、中鎖脂肪酸(MCT)ミルクを併用し、消化酵素配合剤や脂溶性ビタミン剤の補充を行う。予後は良好である。
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年4月6日
- 文責
- :日本小児栄養消化器肝臓学会