1. 慢性消化器疾患
  2. 大分類: 難治性下痢症
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先天性グルコース・ガラクトース吸収不良症

せんてんせいぐるこーす・がらくとーすきゅうしゅうふりょうしょう

glucose-galactose malabsorption; GGM

告示

番号:26

疾病名:先天性グルコース・ガラクトース吸収不良症

概念・定義

グルコース・ガラクトース吸収不全症は、小腸上皮からブドウ糖とガラクトース、およびそれらで構成される分子を吸収することができないために、出生後の哺乳開始とともに激しい下痢がはじまり、数日ないし数週のうちに重篤な脱水、低血糖やアシドーシスに陥る疾患である。

疫学

本疾患については、症例報告や数例をまとめた遺伝子解析の報告が散見されるが稀な疾患であるが、本邦での正確な発症頻度は不詳である。U.S. National Library of Medicin: Genetics Home Referenceでは世界で100〜200例と記載されている。

病因

GGMの病因は、SLC5A1遺伝子の変異により主に小腸上皮細胞の微絨毛でナトリウムとブドウ糖を一緒に取り込むトランスポーターであるSGLT1 (sodium/glucose cotransporter) の機能が失われることにある。このトランスポーターの異常があると小腸でブドウ糖とガラクトースを吸収することができない。したがって、ブドウ糖とガラクトースを構成成分とする糖質、すなわち乳糖、蔗糖(砂糖)、麦芽糖、澱粉はいずれも正常に吸収することができず、さらにナトリウムの吸収も悪いために生後早期から激しい浸透圧性下痢をきたす。SLC5A1遺伝子は22番染色体上に位置し、本疾患は常染色体劣性遺伝形式をとる。

症状

生後早期、すなわち母乳や人工乳を摂取し始めた直後から浸透圧性の激しい水様便をきたす。多くの場合診断が確定するまでの間に高度の脱水や低血糖、アシドーシスといった重篤な状態に陥り、時に致死的となるため、哺乳を中止して経静脈的な補液・補正が必要となる。激しい水様下痢のほか、腹部膨満、腹痛、腹鳴、および体重増加不良をきたす。本症では腎性尿糖を伴うことが多く、腎結石や広汎なカルシウム沈着がみられることがある。

診断

臨床経過から本症が疑われる場合、果糖ミルク(ブドウ糖・ガラクトース除去ミルク)による症状と栄養状態の改善が得られれば診断はほぼ確実である。特異的検査としては、SGLT1遺伝子検査による変異検出、経口ブドウ糖負荷試験がある。ただし、経口ブドウ糖負荷は経静脈輸液管理下に行わなければ危険であるため、血糖値による評価ではなく、負荷後の呼気中水素ガス濃度の上昇(20 ppm以上)をもって診断する。

治療と予後

出生後の下痢の発症と経過から臨床的に本症が疑われる場合、哺乳あるいは糖水の経口投与を直ちに中止し、経静脈補液と糖、電解質、アシドーシスの補正に努める。乳糖、蔗糖、麦芽糖、および澱粉の摂取を中止して果糖ミルクを与える。乳児期以降も同様の糖質除去と果糖を中心とした糖質の供給の継続が必要であるが、加齢とともにブドウ糖の吸収能が改善し、澱粉などの摂取でも症状の発現が軽度となることが知られている。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児栄養消化器肝臓学会