概念・定義
多くは妊娠中の妊婦がサイトメガロウイルスによる初感染をおこし、胎児が感染することにより発症する。
出生時より何らかの異常を認める場合や、無症状の場合もある。効果的な治療法は現時点では確立しておらず、
出生時の症状の有無に関わらずその後難聴や発達障害など遅発性障害を合併する場合もある。
病因
多くが妊娠中のサイトメガロウイルス初感染が原因である。妊婦の抗体保有率が低下傾向にあることが重要な要因である。
希ではあるが、既感染妊婦においてサイトメガロウイルスが再活性化することにより胎児が感染することがある。
疫学
患者数は最大で6~8万人と推計される。
症候性、無症候性にかかわらず何らかの異常を伴う先天性サイトメガロウイルス感染症の頻度は、現在出生1000名に対し1と推定されている。
症候性、無症候性にかかわらず何らかの異常を伴う先天性サイトメガロウイルス感染症の頻度は、現在出生1000名に対し1と推定されている。
臨床症状
症候性の場合には、胎児発育遅延にともなう低出生体重、肝脾腫、脳室内石灰化、脳室拡大、肝機能異常、血小板減少、
網膜炎、けいれんなどの症状を伴う。無症候性の状態で出生しても、その後難聴や精神運動発達遅滞、
てんかんなど遅発性障害が出現することがある。
検査所見
生後3週間までに採取された出生児の尿、臍帯血、もしくは出生時の血液や唾液からサイトメガロウイルスが検出(PCR法陽性)されることが前提
- 血液・生化学的検査所見
血小板減少症(10万以下)
直接型高ビリルビン値の上昇(2mg/dl以上) - 画像検査所見
頭部超音波検査、CTあるいはMRIにより脳室周囲石灰化 - 生理学的所見
聴性脳幹反応の異常
聴力低下
視力低下
診断の際の留意点
とくになし
治療
妊娠中に診断された例に対する有効な治療法は確立されていない。症候性の児に対する抗ウイルス薬の有効性を示す報告もあるが意見の一致をみていない。
これらの薬剤は、副作用が強く、その使用にあたっては慎重な判断が求められる。
合併症
主要症状以外に特異な合併症はない.
予後
症候性の場合は、出生時の異常がそのまま継続する可能性があり、発達予後、視力障害、てんかん、
聴力障害が生涯にわたりQOLに影響する。また、たとえ出生時に無症候であっても、遅発性に精神発達遅滞や運動障害、
聴力障害などが出現する場合にも同様に生涯にわたりQOLに影響する。
成人期以降の注意点
なし
参考文献
- 厚生労働科学班研究・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業
- 「母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究班」作成の診断基準
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2017年3月17日
- 文責
- :日本新生児成育医学会