概念・定義
疫学

病因
孤発性のものの大多数は多系統萎縮症であり、その詳細は多系統萎縮症の項目を参照されたい。一部小脳症状に限局した小脳皮質萎縮症がある。アルコール多飲や、腫瘍に伴って失調症状を示すことがある。若年者で一過性の小脳炎の存在も知られている。 遺伝性の場合は、多くは優性遺伝性である。一部劣性遺伝性、母系遺伝性、希にX染色体遺伝性の物が存在する。 優性遺伝性のSCA1、2、3、6、7、17、DRPLAでは、原因遺伝子の中のCAGという3塩基の繰り返し配列が増大することによりおこる。本症の遺伝子診断は、この繰り返し数の長さにて診断している。各々の正常繰り返し数の上限の目安はSCA1 39、SCA2 32、 MJD/SCA3 40、 SCA6 18、SCA17 42、 DRPLA 36 である。これを超えた場合、疾患の可能性を考えるが、この周辺のリピート長の場合、真に現在の病態に寄与しているかについては、臨床症状を加味し、慎重に診断する。 CAG繰り返し配列は、アミノ酸としてはグルタミンとなるため、本症は異常に増大したグルタミン鎖が原因であると考えられる。他に同様にグルタミン鎖の増大を示す、ハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症と併せて、ポリグルタミン病と総称する。 増大したポリグルタミン鎖によって作られる凝集体が、細胞内に認められる。この事から増大ポリグルタミン鎖の凝集体の易形成性が、直接、もしくは間接的に細胞毒性を持つと考えられている。現在は、凝集体そのものは、むしろ防御的で、それが形成される前の多量体が神経細胞への毒性を持つとする説が強い。 細胞毒性は増大ポリグルタミン鎖により、他の蛋白質の機能が障害され引き起こされるという機序が唱えられている。しかし、その詳しい機序については諸説があり結論がついていない。発病や進行を阻止できる根治的な治療方法の開発につながる病態機序はまだ明らかになっていない。しかし、病態機序に基づいた疾患の根本治療を目指す研究が活発に行われている
症状
各疾患について病型毎の診断基準案を本稿の終わりに列挙する。またより詳しい情報はGenereviews(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1116/)にて入手可能である。
ポリグルタミン病では、CAG繰り返し配列の長さと、発症年齢に負の相関があり、一般にリピート数が長いほど若年で発症し、重症となる傾向にある。ポリグルタミン病は、SCA6を除き、家系内でも症状が多彩で有り、世代を経る毎に重症化する傾向(表現促進現象)を認める。
脊髄小脳変性症の遺伝子診断は保険適応となっていない。ポリグルタミン鎖の増大に関する遺伝子診断は、民間検査機関、もしくは一部の大学病院などで行っている。塩基配列解析を必要とするような疾患の遺伝子診断は行っているところが極めて少ない。これらの診断は、各研究機関(Gentests http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/GeneTests/ で海外の研究機関を紹介している)に問い合わせる。
失調症状の変遷の記載方法としてはICARS、SARA、UMSARSというスケールが用いられる(SARA日本語版PDF、UMSARS日本語版PDF)。またMSAのQOLのスケールもある(MSAのQOL PDF)。ICARASの抜粋が臨床調査個人票に用いられており、この項目のみでも、経過をよく反映する。
SCA7は網膜色素変性症を伴うことが多い。SCA8,SCA17 は極めて臨床症状が多様で有る。
下記に、遺伝性のSCAの診断フローチャートを提示する。家族歴が明瞭で無い場合でもSCA31、SCA8、MJD/SCA3等は可能性がある。この様な家族歴のない症例に対し、遺伝子診断を行う場合は、優性遺伝性疾患で有り、本人の結果が未発症の血縁者にも影響を与えることから、特に十分な説明と同意が必要である。SCA病型の特徴
治療
薬物療法としては、失調症状全般にセレジスト®(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体)が使われる。本薬剤の有効性が確かめられたモデルマウスの一つはSCA6や片頭痛を伴う失調症の原因遺伝子であるカルシウムチャネル(CACNA1A)の点変異マウスである。しかし、実際の使用経験では、本薬剤の効果に病型毎の明確な差は報告されていない。
疾患毎の症状に対して対症的に使われる薬剤がある。MJD/SCA3の有痛性筋痙攣に対する塩酸メキシレチン、SCA6などの周期性の失調症状、めまい症状に対するアセタゾラミド等が挙げられる。
ポリグルタミン病に関しては、ポリグルタミン鎖、もしくはそれが影響を及ぼす蛋白質や細胞機能不全をターゲットとした治療薬の開発が試みられているが、現在の所、有効性があるものはない。
予後

参考文献
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児神経学会




















