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GRIN2B関連神経発達異常症

じーえるあいえぬつーびーかんれんしんけいはったついじょうしょう

GRIN2B-related neurodevelopmental disorder

告示

番号:66

疾病名:GRIN2B関連神経発達異常症

疾患概念

重度の発達遅滞および知的障害、筋緊張異常を特徴とする先天異常症候群である。ほかに、摂食障害、てんかん、自閉症スペクトラム障害、小頭症、運動障害(ジストニアなど)、皮質視覚障害を認める。脳MRIで皮質形成異常を認める。神経伝達受容体のサブユニットの一つをコードするGRIN2B遺伝子の異常を原因とすることから、神経発達に関連した幅広い症状を認める。症状は、小児期以降も軽快せず、成人期以降も持続する。

疫学

発生頻度は不明。海外も含め、確認されているのは100例以下。しかし、国内でも10例近くが確認されている。

病因

N-methyl-D-aspartate receptor(NMDAR)は、脳内で発現しているリガンド依存性のイオンチャネルで、興奮性の神経伝達を担っている。NMDARを介したシグナル伝達は、脳の発達、学習、記憶などの高次認知機能に重要な役割を果たしている。GRIN2B遺伝子は、NMDARの構成サブユニットをコードすることから、その異常は神経発達に関連した幅広い症状をもたらす。

臨床症状

重度の発達遅滞、知的障害。また、てんかん、自閉スペクトラム障害、小頭症、筋緊張低下、ジストニアあるいはジスキネジアなどの運動障害を伴う。

検査所見

頭部MRIでは、多小脳回などの皮質形成異常、脳梁低形成などの構造異常を認める。

診断

臨床症状と頭部MRI所見の組み合わせから本症を疑い、GRIN2Bに病的バリアントを認めれば診断が確定する。

診断の際の留意点/鑑別診断

重度の精神発達遅滞、てんかん性脳症、多小脳回などを認める疾患を鑑別する。ほかにチューブリン異常症など。

治療

対症療法が中心となる。早期からのリハビリテーションや療育の参加は重要。摂食障害や哺乳障害などには経管栄養も考慮する。また、逆流や誤嚥性肺炎などを繰り返す場合には胃ろう造設も考慮する。てんかんに対しては抗てんかん薬を用いる。

予後

合併するてんかんなどの神経症状および呼吸状態、気道感染などが予後を左右する。

研究班

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天異常症候群のライフステージ全体の自然歴と合併症の把握:Reverse phenotypingを包含したアプローチ」

成人期以降の注意点

栄養管理や関節拘縮、側弯の進行、てんかん発作の変化、気道感染に注意する。

参考文献

  1. Platzer K, Lemke JR. GRIN2B-Related Neurodevelopmental Disorder. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA, et al., eds. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; May 31, 2018.
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児遺伝学会
日本小児神経学会