1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 頭蓋骨縫合早期癒合症
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アペール (Apert) 症候群

あぺーるしょうこうぐん

Apert syndrome

告示

番号:31

疾病名:アペール症候群

概要

複数の頭蓋骨縫合早期癒合に、顔面・上顎骨、手指・足趾、四肢の先天性形成不全を合併しているものを症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症という.通常は特徴的な顔貌を伴うため、頭蓋顔面異常とよばれることもある. Apert症候群は尖頭合指症(acrocephalosyndactyly) type1に分類される症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症である。頭蓋形態・顔貌・脳形成異常のみならず、心臓・消化器・骨盤臓器にも異常を伴うことがある。常染色体優性遺伝疾患であるが多くは弧発性に発生する。遺伝子解析ではFGFR2 exson7の変異が高率に認められ、FGFR関連頭蓋骨縫合早期癒合症候群の代表的疾患でもある。

疫学

Apert症候群の頻度は出生55,000人あたり1名前後と推定されている。

病因

近年の遺伝子解析の進歩により、FGFR2のSer252TrpとPro253Argのいずれかの変異が98%以上の高率に認められ、遺伝子診断の重要性は高い。染色体異常は通常は伴わない。常染色体優性遺伝疾患であるが多くは弧発発症例であり、父親の年令(高齢)との関連が知られている。

症状

特徴的な頭蓋形態・顔貌と高度の骨性合指(趾)症により診断される。短頭蓋・頭囲拡大、左右対称性合指(趾)症、中顔面骨低形成、眼窩間距離開大などを特徴とする。大泉門は開大しており、閉鎖時期も正常より遅れる。このこともあり乳児期に前頭蓋窩が膨隆してくる.Crouzon病と異なり、二次的キアリ奇形を合併することは稀である。

合併症

精神運動発達遅滞、頭蓋内圧亢進、水頭症、脳梁形成不全、頚部癒合椎、二分脊椎、先天性心奇形、気管形成異常・狭窄、肛門形成異常、水腎症・多嚢胞性腎、双角子宮など

治療法

短頭蓋及び前頭眼窩変形に対しては、頭蓋骨拡大形成術、頭蓋延長器装着術などが行われる。通常、1回の手術で完治することは難しく、複数回の手術を段階的に行う。水頭症を合併した場合は、頭蓋内圧亢進の程度・症状の有無及び重症度を検討し、治療の必要性及び治療時期を判断する。合指・趾症に対する治療も、頭蓋顔面の治療と日程調節を会わせて行う。中顔面骨低形成に対する延長術は、可能であれば学童期以降まで待つことが望ましい。

研究班

Craniosynostosis研究会において、国内における頭蓋骨縫合早期癒合症の実態調査が開始されたところである。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児神経学会、日本小児神経外科学会