1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 遺伝子異常による白質脳症
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アレキサンダー(Alexander)病

あれきさんだーびょう

Alexander disease

告示

番号:2

疾病名:アレキサンダー病

概念・定義

病理学的にグリア線維性酸性蛋白(GFAP)、αB-クリスタリン、熱 ショック蛋白などから構成されるローゼンタル線維を星状膠細胞に認めることを特徴とする希な遺伝性神経変性疾患である。臨床的には臨床症状、MRI画像所見より大脳優位型(1型)、延髄・脊髄優位型(2型)、中間型(3型)に分類できる。アレキサンダー病の97%でGFAP遺伝子変異が認められ、近年では遺伝子検査が確定診断法として主流になっている。1型ではR79、R88、R239がGFAP遺伝子変異の約75%を占めているが、2型では特に頻度の高い変異は認めない。病態はまだ解明されておらず、効果的な治療方法もなく、長期にわたる療養生活を必要とする難治性神経疾患である。

疫学

2009年に「アレキサンダー病の診断基準の作成、全国調査、病態解 明・治療法開発のための研究」班で実施した全国有病者数調査の結果から、本邦での有病者数は約50名と推定される。男女差は明らかでない。臨床病型別では 2型が約半数と最も多く、1型が約1/3、3型が約1/5である。GFAP遺伝子変異が97%の症例で認められる。遺伝形式については2型は常染色体優性遺伝形式で家族内発症が約65%にみられる。1型は一卵性双胎例の報告が若干あるが、すべてが新生突然変異と思われる

病因

GFAP遺伝子変異による機能獲得が原因と考えられている。病態としてはGFAP凝集体が細胞毒性をもつとする研究やGFAP凝集体に対する細胞内タンパク質分解系の異常が病態に関与するという研究結果などがある。遺伝子変異と臨床型との関連については1型では約75%がR79,R88,R239の変異であるが、2型では明らかなhot spotは認めない

症状

(1) 1型:発症時期は生下時から2歳ごろまでで、学童期以前に死亡することが多いとされるが、長期生存例もまれではない。症状はけいれん、精神運動発 達遅延、大頭症、痙性麻痺が主なものである。頭部MRIにて前頭部優位の広範な大脳白質異常、基底核・視床の異常、脳室周囲縁取りの異常、脳幹異常、造影 効果が認められる。 (2)2型:学童期あるいは成人期以降の発症で、神経学的所見として筋力低下、痙性麻痺、球症状、MRI所見として延髄・頚髄の信号異常あるいは萎縮を特徴とする。1型に比べると進行は緩徐である場合が多い。家族内発症が多く、無症候の症例も存在する。 (3)3型:1型および2型の両者の特徴を有する型。発症時期は幼児期から青年期まで幅広い。また、1型の長期生存例において2型の特徴がのちに現れることがあるが、これも本型に含める。 合併症として乳児型では嘔吐などの消化器症状や発育不良が多いとされる。また根治的治療はない。けいれんに対して抗てんかん薬が有効な例が多い。痙性麻痺に対しては抗痙縮薬が用いられる。また、TRH投与により臨床症状の改善が認められたという報告がある。 (アレキサンダー病の診断基準および治療・ケア指針の作成、病態解明・治療法開発のための研究班より)

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児神経学会