概要
末梢血中の成熟好酸球が1500個/mm3以上に増加し、組織に浸潤して臓器障害を生じる。
病因
一部の症例では異常な表面形質を有するTリンパ球が増殖し、これらがIL-5などの増殖因子を大量分泌して好酸球増加症の原因となる。一部症例ではチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブにより好酸球の増加が抑制され、チロシンキナーゼとして恒常的に活性化しているFIPIL1-PDGFRαなどの融合遺伝子が病因としても考えられている。しかしFIPIL1-PDGFRαの融合mRNAが検出されないにも関わらずイマチニブに感受性のある、イマチニブ作用チロシンキナーゼが不明な症例も存在する。
疫学
非常にまれな疾患であり、日本における患者数についての報告はない。海外ではおおよそ100万人に1~2人程度の発症率と推測されている。男女比は9:1と男性に多い。
臨床症状
主に20~50歳で発症する。偶然発見されるものから緊急入院を要するものまで病状は幅広い。すべての臓器に好酸球が浸潤し、心臓障害(心内膜炎、心筋障害、心不全)、呼吸器障害(胸膜炎)、肺浸潤、関節病変、皮膚症状、中枢神経障害、消化管障害、腎障害を生じうる。貧血、血小板減少を伴うことが多く、約1/3の症例でIgEの上昇が認められる。また、凝固機能が亢進していることが多い。
治療
FIPIL1-PDGFRα遺伝子融合例ではイマチニブが著効する。一部のFIPIL1-PDGFRα融合遺伝子陰性例においても有効であるが、その適応は定まってはいない。チロシンキナーゼ阻害剤の効果が乏しい場合は、好酸球による臓器障害予防のためステロイドが用いられ、効果不十分ならヒドロキシカルバミド、シクロスポリン、インターフェロンα、その他の抗がん剤などを用いる。
合併症
心合併症が50~70%と高率で重篤である。好酸球蛋白による心内膜の線維化・肥厚による心筋症から心不全へ至る。血栓症、塞栓症などの血管病変、肺浸潤影や胸水貯留、皮膚へ浸潤による皮疹、血管性浮腫、皮膚潰瘍、神経浸潤によるてんかんや行動異常、感覚障害、多発神経炎を合併することがある。
成人期以降の注意点
妊娠、出産時には、主治医にも相談する。
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年6月25日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会
概要・定義
好酸球性消化管疾患(Eosinophilic gastrointestinal disorders, EGIDs)は好酸球の消化管局所への異常な集積から好酸球性炎症により組織が傷害され,機能不全を起こす疾患の総称である。部位により主として好酸球性食道炎(Eosinophilic Esophagitis, EoE),胃腸炎 (Eosinophilic Gastroenteritis, EGE)に大別される。またEoEを疑われたがプロトンポンプ阻害薬(PPI)に良好な反応を示した場合はproton-pump inhibitor (PPI)-responsive esophageal eosinophilia(PPI-REE)と区別されることもある。
疫学
本邦成人での患者数は、EoE平均4.3人/年程度,EGE平均24人/年程度。小児の国内例は、EoEはこれまでに数例が確認されている程度。EGEは2005年以降に100例前後の報告がある。
病因
気管支喘息など他のアレルギー性炎症性疾患と類似の機序で好酸球が局所に遊走し組織傷害性に作用する。さらにEoEではThymic stromal lymphopoietin(TSLP)、IL-13、eotaxin-3の関連が言われている。またEGIDはIgEと非IgE型の混合型アレルギーとされている。
症状
EoEでは年齢により症状が異なる。乳幼児は哺乳障害,幼児から学童は嘔吐,学童から10代前半は腹痛,嚥下障害,さらに10代から成人以降では嚥下障害,食物嵌頓が見られることがある。
EGEでは嘔吐,下痢,吸収不全をきたし低蛋白血症や鉄欠乏性貧血を起こす。筋層に浸潤した場合は閉塞症状。漿膜浸潤では腹水が見られることがある。
治療
EoEではPPIに対する反応性が良好の場合(PPI-REE)があるので,PPIをまず使用する。PPI不応例では吸入ステロイドの嚥下(保健適応外使用),除去食療法が選択される。重症例では全身性グルココルチコイド療法、抗体製剤も検討される。バルーン拡張術も用いられる。
EGEでは一般に全身性グルココルチコイド療法が用いられ奏効することが多い。ステロイド依存や副作用が強い場合には免疫抑制薬が考慮される。小児を中心に食物アレルギーの関与が強い場合には除去食療法が選択されることもある。
ケア
本疾患に特異的なものはないが、小児を中心に摂食機能障害や不定愁訴を最初に認め注意が必要なことがある。
食事・栄養
食物アレルギーの関与がある場合には上記の様に原因食物の除去が必要となる。またEGEでは低蛋白血症や鉄欠乏性貧血をきたし栄養管理が必要なことがある。
予後
EGIDは一般に慢性疾患であり,しばしば再燃する。時に原因抗原が判明し根本的な治療につながることもある。
成人期以降の注意点
妊娠、出産時には、主治医にも相談する。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2015年6月25日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会