疾患概念
疫学
症状
凝固因子欠乏症では関節内や筋肉内といった深部出血が特徴といわれるが、鼻出血や皮膚の出血斑も多い。血友病類縁疾患の臨床症状は欠乏する凝固因子によっても様々である。新生児の遷延する臍出血はフィブリノゲン欠乏症や先天性第XIII因子欠乏症に特徴的である。またフィブリノゲン欠乏症や先天性第XIII因子欠乏症は自然流産の原因になる。 ①先天性フィブリノゲン欠乏/異常症 フィブリノゲンは血小板の凝集、炎症反応の防御、組織修復・創傷治癒に関与し、妊娠の成立、維持の必須因子でもある。そのため先天性フィブリノゲン欠乏症では臍出血、頭血腫、消化管・頭蓋内・関節内出血、自然流産(習慣性流産)や創傷治癒の遅延が出現する。フィブリノゲン欠乏症の女性では排卵に伴う卵巣出血により腹腔内出血を生じることもある。一方、フィブリノゲン異常症では出血症状だけでなく血栓傾向を認める患者が約15%存在し、一部の患者では出血傾向と血栓傾向の両者を認める。自然流産の原因ともなり、分娩後に過多出血や血栓塞栓症が出現することもある。 ②先天性プロトロンビン欠乏/異常症 皮下・鼻・歯肉出血、関節内・筋肉内血腫が生じる。異常症は無症候か比較的軽症である。 ③先天性第V因子欠乏症 パラ血友病と称される。皮下・鼻・歯肉出血、月経過多、筋肉内血腫を生じる。重症例もあるが、血友病に比較して臨床症状は比較的穏やかで無症候例もある。 ④先天性第VII因子欠乏症 皮下・鼻・歯肉・抜歯後・外傷後出血、月経過多を生じ、頭蓋内出血や胸腔内出血を認めることもある。血友病と比較すると症状が軽微であるが、凝固因子活性が1%以下の患者では重症血友病に類似した重症出血を生じることがある。 ⑤先天性第X因子欠乏症 皮下・鼻・歯肉出血、外傷後過剰出血、月経過多、頭蓋内・関節内出血を生じる。出血の程度は第X因子活性と相関し、凝固因子レベルが1%以下の患者では、関節内、軟部組織、粘膜からの重症出血を生じる。 ⑥先天性第XI因子欠乏症 血友病Cと称され、術後・外傷後出血を生じる。無症状も多く出血症状は比較的軽度であるが、線溶活性が亢進するため、線溶活性が高い部位での手術や外傷、抜歯時には出血傾向が強く現れる。 ⑦先天性第XII因子欠乏症 通常出血傾向は認められない。 ⑧先天性第XIII因子欠乏症 臍出血、臍帯脱落遅延、創傷治癒遅延、皮下出血、筋肉内・関節内出血、頭蓋内出血、自然流産(習慣性流産)を生じる。 第XIII因子は、フィブリンの架橋ならびにフィブリン塊の安定化に必須であるため、第XIII因子欠乏症では凝血塊が機械的に不安定となり、線溶系に対する感受性が高いため出血傾向を生じる。一時的に止血して24~36時間後に再び出血する後出血が特徴である
診断
治療
予後
生命予後は健常成人と同等と考えられている。出血頻度や関節障害の程度は欠乏する凝固因子の種類や程度によって異なるが、概して血友病に比べて少ない
参考文献
・公益財団法人エイズ予防財団 血液凝固異常症全国調査委員会: 血液凝固異常症全国調査平成25年度報告書. p10; 2014 ・厚生労働省編: 血液製剤の使用指針. 血液製剤の使用にあたって第3版-輸血療法の実施に関する指針(改定版); 2005 ・長江千愛, 他:その他の先天性凝固因子障害症の診断と治療. 血栓止血誌21:297-300; 2010
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会