1. 血液疾患
  2. 大分類: 先天性血液凝固因子異常
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血友病B

けつゆうびょうびー

haemophilia B

告示

番号:30

疾病名:血友病B

疾患概念

血友病は血液凝固第VIII因子の量的・質的異常症である血友病Aと、第IX因子の量的・質的異常症である血友病Bとがある。X連鎖劣性遺伝形式を示す先天性凝固障害症であり、出血症状が幼少時から反復する。患者は通常男性で、女性は保因者となる。女性血友病は極めて稀である。孤発例も約30%に見られる。第VIII因子または第IX因子遺伝子はX染色体長腕上にあり、これらの遺伝子異常により発症する。血友病Aでは欠失や点変異、挿入、逆位など多岐にわたるが、イントロン22の逆位は重症型の約40%にみられる。一方、血友病Bは点変異が多い。第VIII因子と第IX因子は血液凝固反応における第X因子の活性化に必須である。従って本症は、第VIII因子または第IX因子が欠乏することにより第X因子活性化障害をきたし、トロンビン産生が低下することにより著明な出血傾向を呈する。

疫学

先天性凝固障害症の中で最も多く、全血友病患者での出生頻度は、男子出生1万人に1~2人である。平成24年度血液凝固異常症全国調査(厚生労働省委託事業)によると血友病Aは4,627人、血友病Bは990人であり、血友病A:B=4.6:1の割合である。

症状

臨床的重症度は第VIII因子または第IX因子活性値と相関し、<1%は重症、1~5%は中等症、5<~<40%は軽症に分類される。両血友病は欠乏している凝固因子は異なるが、臨床症状は類似する。重症型では乳児期後半から四肢や臀部等に血腫を伴う皮下出血が反復出現するが、幼児期以降は関節内出血や筋肉内出血の深部出血が多くみられる。大関節、特に膝、足、肘に多く、同一関節に出血を反復して関節変形と拘縮をきたし血友病性関節症に至る。口腔内や消化管出血、血尿もみられ、頭蓋内や腹腔内出血の重篤出血も起こりえる。一方、中等~軽症例では自発出血はほとんどみられず、抜歯や手術、外傷後の止血困難か、スクリーニング検査で偶然診断されることが多い。

診断

治療

止血治療は、血友病Aでは第VIII因子製剤、血友病B では第IX因子製剤による補充療法が基本である。凝固因子製剤には血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤がある。第VIII因子または第IX因子製剤を体重当たり1単位投与にて因子活性はそれぞれ約2%と0.7~1%上昇するため、出血部位や程度に応じて目標因子活性レベルを設定する。また、第VIII因子または第IX因子の血中半減期はそれぞれ8~12、12~24時間を参考に投与間隔や期間を決定する。重篤出血や手術など活性レベルを一定に維持することが必要な場合は第VIII因子または第IX因子製剤の持続輸注療法も考慮する。デスモプレシン静脈内投与は血友病Aの軽症もしくは中等症患者に施行されることがある。さらに、血友病性関節症の進行や日常の活動制限の軽減を目的とした定期補充療法も現在普及してきており、患者本人または家人に対して自己注射を指導したうえで家庭療法の形で行われる。 一方、反復する補充療法の結果、血友病Aでは20~30%、血友病Bでは3~5%に当該因子に対する同種抗体(インヒビター)が出現することがある。インヒビターが一旦出現すると、従来の凝固因子製剤のみでは止血管理が困難であることが多い。インヒビター患者の止血管理はバイパス止血療法または中和療法が行われる。バイパス止血製剤として活性型プロトロンビン複合体製剤または遺伝子組換え活性型第VII因子製剤を使用する。中和療法とは、血中に存在するインヒビターを中和し、さらに止血レベルに達する大量の当該因子製剤を投与する。近年、インヒビター保有患者に当該因子製剤を繰り返し投与することで免疫寛容の状態へ導入させ、インヒビターを消失させる免疫寛容導入療法も試みられている。

予後

本症の治療の発展は日々前進しており、患者の生命予後は勿論のこと、従来の血友病性関節症での日常生活動作(ADL)の低下も著しく改善してきているのが現状である。

参考文献

● 藤井輝久、他: インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン:2013年改訂版. 血栓止血誌24: 619-639; 2013 ● 酒井道生、他: インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン:2013年改訂版. 血栓止血誌24: 640-658; 2013
:バージョン1.1
更新日
:2015年6月15日
文責
:日本小児血液・がん学会