疾患概念
本疾患は、新生児期から乳児期より血小板減少があり、骨髄にて巨核球が著減する疾患である。その後、血小板、白血球、赤血球の3系統の骨髄造血不全が徐々に進行し汎血球減少へ進行することが多い。常染色体劣性遺伝形式をとり、thrombopoietin(TPO)受容体をコードするMPL遺伝子異常が原因の一つであることが報告されている1-6)。
疫学
これまで世界で約60例の報告がある6)。
病因
本疾患の一部ではthrombopoietin(TPO)受容体をコードするMPL遺伝子異常に遺伝子変異を有しており、このためトロンボポイエチンに反応せず、巨核球が減少して末梢血血小板数の減少も見られる。トロンボポイエチンは造血幹細胞の維持・増殖にも関与しているため、経過とともに汎血球減少へ進行することが多い1-6)。MPL遺伝子変異を有さない例での病因は不明である。
臨床症状
主要症状は(1)血小板減少および汎血球減少による症状と、(2)合併奇形である。
(1)血小板減少は全例で見られ、皮下出血斑、歯肉出血、鼻出血などの出血傾向が見られる。汎血球減少への進行により、赤血球減少例では顔色不良、動悸、めまいなどの貧血症状、好中球減少例やリンパ球減少例では易感染性を呈する1-6)。
(2)診断に必須ではないが、一部の症例で中枢神経系の奇形、眼球異常などが報告されている6)。
治療
(1)輸血・造血因子
血小板数が10,000/uL以下で明らかな出血傾向があれば血小板輸血を行なう。貧血に対しては、ヘモグロビン値を7g/dL以上に保つように赤血球輸血を行なう。しかし、輸血は未知の感染症や血小板輸血に対する不応性を招く危険性があるうえ、同種造血幹細胞移植時の拒絶の危険性が増すので必要最小限にとどめるべきである。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与によりほとんどの例で好中球は増加するが、投与を中止するともとの値に戻り、その効果は一時的である。
(2)造血細胞移植
本疾患に対して現時点では唯一血液学的な根治が期待できる治療法である。一般的に重度の汎血球減少症に進行する前に移植を選択すべきである1-6)。移植方法については今後の課題であるが、フルダラビンを含む骨髄非破壊的前処置は今後推奨されるべき方法である3-6)。
予後
本疾患の長期的予後は不明であるが、造血幹細胞移植を施行して血液学的所見が改善した症例の予後は比較的良好である6)。
参考文献
- Ihara K, Ishii E, Eguchi M, et al. Identification of mutation in the c-mpl gene in congenital amegakaryocytic thrombocytopenia. Proc Natl Acad Sci USA 96: 3131-3136, 1999.
- Ballmaier M, Germeshausen M, Schulze H, et al. c-mpl mutations are the cause of congenital amegakaryocytic thrombocytopenia. Blood 97:139-146, 2001.
- Ballmaier M, Germeshausen M. Advances in the understanding of congenital amegakaryocytic thrombocytopenia. Br J Haematol 146:3-16,2009.
- Ballmaier M, Germeshausen M. Congenital amegakaryocytic thrombocytopenia: clinical presentation, diagnosis, and treatment. Semin Thromb Hemost 37:673-681,2011.
- Geddis AE. Congenital Amegakaryocytic Thrombocytopenia. Pediatr Blood Cancer 2011;57:199–203.
- Germeshausen M, Ballmaier M. Amegakaryocytic thrombocytopenia caused by MPL mutations-heterogeneity of a monogenic disorder-comprehensive analysis of 56 patients. Haematologica 2020.
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会