疾患概念
脾機能亢進症は、あらゆる原因の脾腫で誘発される二次的な病態であり、血小板減少などの血球減少症を伴う。脾腫を来す疾患としては、うっ血性脾腫、感染症および炎症性疾患、骨髄増殖性およびリンパ増殖性疾患、先天性溶血性貧血、先天性代謝異常症、脾嚢胞などがある。このうち、血小板数が10万/μL未満の場合、脾機能亢進症による血小板減少症とする。しかし、骨髄増殖性およびリンパ増殖性疾患(白血病、悪性リンパ腫、骨髄線維症)や先天性溶血性貧血などでも二次性の脾機能亢進症を来たすことがあるが、「脾機能亢進症による血小板減少症」からは除外する。
病因
脾腫の存在により、血球の貯留・破壊が亢進し、しばしば血球減少を惹起する。脾腫を来たす主な疾患としては、以下のものがある。
うっ血性脾腫
門脈または脾静脈の外的圧迫または血栓症 門脈脈管構造の奇形 肝硬変 特発性門脈圧亢進症 右心不全など感染症および炎症性疾患
急性、慢性の各種感染症 サルコイドーシス アミロイドーシスなど骨髄増殖性およびリンパ増殖性疾患
白血病、特に慢性骨髄性白血病など 悪性リンパ腫 骨髄線維症 真性赤血球増加症など先天性溶血性貧血
赤血球形態異常を伴う溶血性貧血(先天性球状赤血球症、先天性楕円赤血球症など) 赤血球酵素異常症、サラセミアなど先天性代謝異常症
ゴーシェ病、ニーマンピック病など脾嚢胞など
臨床症状
脾腫を来たす基礎疾患に由来する様々な症状がある。一方、脾機能亢進症による貧血、白血球減少、血小板減少は中等度でることが多く、血球減少があっても無症状であることも多い。
診断
血小板減少と脾腫の確認が必要である。脾腫の確認には、触診の他に、超音波検査なども重要である。またCT検査やMRI検査では、脾臓の硬度など、脾腫に関する更に詳細な情報が得られる。更に脾腫に関連した門脈や脾静脈血栓症の有無なども、これらの画像診断で確認できるため、有用である。
治療
治療は、基礎疾患に対して行われる。重度の脾機能亢進症がない限り、脾腫自体に対する治療は必要ない。しかし脾腫が著しい場合、脾臓破裂などの危険性を考慮して、格闘技などの接触系スポーツは避けるよう指導する。 一方、血小板減少症などの脾機能亢進症がその疾患における主要症状の場合、摘脾術や脾動脈塞栓術なども行われることがある。
予後
予後は、脾腫を来たす基礎疾患に対する治療の成否によって規定される。
成人期以降の注意点
脾機能亢進の原因病態のコントロールが成人期に到まで必要になることがある。
参考文献
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- 刈米重夫.脾機能亢進症.日本臨床 1991;49:676-684.
- 藤澤知雄、橋本卓史.小児の門脈圧亢進症の病態と治療 2010;61:277-284.
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会