概要・定義
異染性白質ジストロフィーは、アリルスルファターゼAの欠損により発症する、常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝病である。脳白質、末梢神経、腎臓などにスルファチドが蓄積し、中枢および末梢神経障害をきたす。発症頻度は4万~16万人に1人である。発症時期と臨床経過により、乳児型、若年型、成人型に分類される。乳児型は2歳までに発症し、筋緊張低下、深部腱反射消失、歩行障害を呈する。若年型は4~6歳頃に発症し、視神経萎縮、知能障害、痙性麻痺などを呈する。成人型は10代後半以降に情緒障害、言語障害、痴呆、精神症状などで発症し、5~10年の経過で進行する。
疫学
罹患率は4万~16万人に1人とされている。
病因
ARSA遺伝子がコードするアリルスルファターゼAの欠損によりスルファチド、リゾスルファチド、セラミドラクトシル硫酸などの糖脂質が脳や腎臟に蓄積する。
症状
生後15-24ヶ月頃に発症する、乳幼児型が全体の50-60%をしめる。筋力低下、表情が乏しいなど初発症状がある。言葉の消失、嚥下困難、下肢からはじまる痙性まひ、けいれんなどの症状が出現し、退行してゆく。若年型は3歳~10歳から歩行障害、知的障害、錐体路症状など出現し進行する。成人型は20歳以降で痴呆などの症状で発症し、精神症状を伴う場合もある。頭部MRIで、著明な白質変性を認める。
診断
末梢リンパ球または培養皮膚線維芽細胞を用い、アリルスルファターゼA酵素活性の欠損を検出する。
遺伝子診断としてはARSA遺伝子変異を検出する。尿中のスルファチドの蓄積も診断には有用である。
治療
現段階では対症療法に限られる。造血幹細胞移植が行われる場合もあり、初期の段階で行われれば症状の進行を抑制できる患者さんもいる。現在、遺伝子治療の開発が進められている。
予後
乳幼児型、若年型は予後不良であり、成人に達することは困難である。
成人期以降
成人型では精神症状など統合失調症と似ている場合があり鑑別に注意を要する。
参考文献
衛藤義勝:異染性白質変性症. 別冊日本臨床 新領域別症候群 No.20 先天代謝異常症(第2版) 下—病因・病態研究、診断・治療の進歩—:599-603,2012.
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会