概要・定義
糖原病III型(Cori病)は、トランスフェラーゼ (4-α-グルカントランスフェラーゼ) 活性とグルコシダーゼ(アミロ-α-1,6-グルコシダーゼ)活性を有するグリコーゲン脱分枝酵素の欠損による常染色体遺伝性疾患で、組織にグリコーゲン限界デキストリンが蓄積する。欠損活性の種類と罹患臓器により①IIIa型(肝筋型)②IIIb型(肝型)③IIId型 (肝筋型、α-1,4-グルカントランスフェラーゼ単独欠損症)に分類される。
疫学
有病率は20万人に1人程度と推測される。糖原病III型のサブタイプではIIIa型が最も多い。
病因
グリコーゲン脱分枝酵素の欠損により、グリコーゲンの分解が障害され、組織にグリコーゲン限界デキストリンが蓄積する。原因遺伝子は染色体1p21.2に存在するAGLで、ホモ接合または複合ヘテロ接合の変異により発症する。
症状
空腹時の低血糖症状、人形様顔貌、成長障害、肝腫大。糖原病I型に比し症状は軽度である。IIIa型とIIId型では経過中に筋力低下や心筋症をきたす。IIIa型とIIId型では運動発達遅滞が見られることやミオパチー症状が進行することがある。筋症状の出現時期は様々である。
診断
『診断の手引き』参照
治療
低血糖を発症する急性期にはただちにグルコース静脈内投与を行い、状態に応じて持続点滴に移行する。代謝性アシドーシスを補正する。低血糖の予防には頻回の食事摂取や必要に応じて、夜間の持続注入を行う。糖原病治療用ミルク、非加熱のコーンスターチを投与する。乳酸、果糖、ショ糖、ガラクトースの摂取を制限する。IIIa型とIIId型の心筋症に対して、薬物治療などを行う。
予後
肝腫大や低血糖、成長障害が主症状は年齢とともに改善するが、肝腫大消失後に、肝に良性の腫瘍(腺腫)や、まれに肝がんが発生することがある。IIIa型, IIId型の成人期には筋力低下が進行し、歩行不能となる症例がある。IIIa型、IIId型では、心筋肥大が見られ、肥大型心筋症や心不全の症状が出現することがある。不整脈にも注意が必要である。
成人期以降
ミオパチー症状が進行し、QOLが低下することがある。肝硬変や肝腫瘍の有無、心機能、不整脈の評価を定期的に行う必要がある。肝癌発生のリスクが高い場合、肝移植が選択される場合がある。
参考文献
1)Kishmani PS, et al:Glycogen storage disease type III disgnosis and management guidelines. Genet Med 2010;12 446-463.
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会