1. 膠原病
  2. 大分類: 血管炎症候群
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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう

eosinophilic granulomatosis with polyangiitis; EGPA

告示

番号:3

疾病名:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

概念・定義

 気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行し、その後末梢血好酸球増多を伴って発症する中小型血管の壊死性血管炎である。病理学的には血管周囲への好酸球浸潤や、好酸球浸潤を伴う血管外肉芽腫性病変が全身の結合組織間質にみられる。以前は、アレルギー性肉芽腫性血管炎allergic granulomatous angiitis (AGA)、あるいはチャーグ・ストラウス症候群Churg-Strauss syndrome (CSS)と呼ばれていた。

疫学

 好発年齢は30~60歳、男女比は4:6でやや女性が多い。本邦で2009年に行われた疫学調査では、医療施設受診者は年間1,800例と推定され、新規患者数は100例、罹患率は人口10万人あたり0.24とされている。小児例は少なく症例報告に留まるが、思春期以降の発症例が多い。

病因・病態

 病因は不明であるが、気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行し、好酸球増多を伴って発症することから、何らかの抗原刺激が関与することが示唆される。また過半数でMPO-ANCAが陽性となることから、ANCAが好中球の活性化と血管付着を促進し、好中球から放出された活性酸素やMPOが血管を障害する機序が想定されている。

症状

1)先行症状  血管炎に先行して、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の発症がみられる。 気管支喘息は殆どの例で先行して発症している。血管炎発症までの期間は3~8年以内が多いが、10~30年以上経過した後に発症する例もみられる。喘息は発症時から重症で難治例が多いものの、アトピー素因を認める例は半数以下に留まる。  先行症状としてのアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が約30~70% にみられ、嗅覚障害をきたし易い。 2)血管炎による症状  全身症状としては発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(成人では6か月以内に6kg以上)がみられる。  臓器障害として最も多いのが、多発性単神経炎(96%)であり、治療により病態が寛解してもしびれなどの知覚障害や運動機能障害を残すことがある。また、紫斑、皮下出血などの皮膚症状(51%)、消化管出血や腹膜炎などの消化器症状(43%)、筋痛や筋炎、関節炎など、血管炎としての多彩な症状がみられる。重症例では血管障害による心筋梗塞、脳梗塞、腸管穿孔を発症し、しばしば致死的な経過をとる。

診断

治療

 ANCA関連血管炎の診療ガイドライン1)の重症度分類に従った治療が行われる。  寛解導入療法では、軽症例ではステロイド内服が有効で、経口プレドニゾロンPSL 40-60mg/dayで治療が開始され、約80%はステロイド単剤で寛解する。一方、3臓器以上に障害がみられる重症例では、ステロイドパルス療法または経口プレドニゾロンPSL 60mgで治療を開始し、4週以内にシクロフォスファミド・パルス療法IVCYまたは経口CYの併用を開始する。またステロイド療法に抵抗性の多発性単神経炎に対しては、高用量γグロブリン静注療法も行われている2)。  寛解維持療法としては、低用量の内服PSL単独が行われるが、免疫抑制薬を併用する場合はアザチオプリンAZTが推奨されている。

予後

 ステロイドに対する反応は良く、約90%の症例で6か月以内に寛解が得られる。しかし、寛解後も神経障害が残存する例がみられ、治療抵抗例では寛解と増悪を反復する。死亡例50例の検討では、心不全や心筋梗塞などの心病変(48%)、腎不全(18%)、脳出血(16%)が死因となる3)

参考文献

1)ANCA関連血管炎の診療ガイドライン(2014年改訂版)編集:尾崎承一、槇野博史.難治性血管炎に関する調査研究班/進行性腎障害に関する調査研究班、2014. 2)Taniguchi M, et al. Treatment for Churg-Strauss syndrome: induction of remission and efficacy of intravenous immunoglobulin therapy. Allegol Int 2007, 56:97-103. 3)Lanham JG, et al. Systemic vasculitis with asthma and eosinophilia: A clinical approach to the Churg-Strauss syndrome. Medicine 1984, 63:65-81.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児リウマチ学会