概念・定義
病因
膵に発生するグルカゴン産生腫瘍による
疫学
2002~2004年に我が国で報告された膵内分泌腫瘍は514例で、うち4.9%がグルカゴノーマであった。悪性率は52%であった。好発年齢は40~70歳で,やや女性に多くみられる。小児期には極めてまれである
臨床症状
遊走性壊死性紅斑、耐糖能障害や糖尿病、低アミノ酸血症、低アルブミン血症、体重減少、貧血などがある。また、静脈血栓症や精神神経症状(失調症状、認知症、視神経萎縮、近位筋筋力低下も認められる。遊走性壊死性紅斑がない場合もある。壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマ症候群の70%にみられるもっともありふれた所見である。はじめ紅斑性丘疹や紅斑の形で,会陰部や鼠径部に生じ,それが四肢に遊走していく。次第に大きくなって融合し,中央に青銅色の硬結が生じ,周囲には痂皮・落屑が形成され,痛みやかゆみが生じる。粘膜にこのような病変が遊走すると舌炎,口角炎,口内炎,眼瞼炎などになる。体重減少は65%に,糖尿病は50%にみられる。正球性貧血は約30%。消化器症状は下痢,便秘,食欲低下,腹痛がある。下痢は約20%に生じるが,この原因としてこの腫瘍から同時に出されるセロトニン,VIP,ガストリンなどが関与していると考えられている。精神神経症状は約20%に認められ,うつ状態が認められる。深部静脈血栓症が10~15%にみられるが,これは致命的な状態になり得る。毛髪が細くなったり,うすくなったりすることもある
診断
血漿グルカゴン測定と血中アミノ酸濃度測定が有用である。グルカゴノーマ症例のグルカゴン血中濃度は500 pg/mL を超えることが多い。原発腫瘍は膵に局在することが多い。局在診断のため、US、CT、MRI、EUS 検査が有用である
治療
外科的切除が治癒させうる唯一の治療法であり、グルカゴノーマの診断が確定した時点で外科切除を考慮する。内分泌症状の緩和にはソマトスタチンアナログが有用である。遊走性壊死性紅斑にアミノ酸と脂肪酸の定期的輸注が有効である
予後
肝転移や骨転移が最大の予後因子である
参考
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児内分泌学会