概念・定義
疫学
日本小児内分泌学会と厚生労働省難治性疾患克服研究事業が2010年に共同で行った全国実態調査からは有病率は約70,000〜85,000人に1人と推定される
病因
臨床症状
男性ホルモン分泌障害と精子形成障害が主となる。重症例では、出生時に外性器・性腺の非定型的所見で発見される。具体的には尿道下裂、小陰茎、停留精巣、小精巣ないし精巣退縮である。法律上の性別を簡単に決定出来ない症例がありうる。ミュラー管由来構造物(子宮)が退縮せずに、残存することが多い。軽症例では、男性の思春期の発来遅延や成人期の不妊症で発見される。具体的には陰茎、精巣、陰毛の発育不良、乏精子症ないし無精子症などである。 その他、性分化以外の随伴症状としては、Denys-Drash症候群やFrasier症候群のWT1異常症ではWilms腫瘍や腎不全、NR5A1異常症では副腎不全、X-linked lissencephaly with abnormal genitalia (XLAG、ARX異常症)では滑脳症、Alpha-thalassemia/mental retardation syndrome, X-linked (ATRX)ではαサラセミアや精神発達遅滞、DHH異常症では多発神経障害、SOX9異常症では肩甲骨低形成や大腿骨弯曲などの骨格異常、Sudden infant death with dysgenesis of the testis (SIDDT、TSPYL1異常症)では乳児突然死症候群が認められる
検査所見
染色体は46,XY。内分泌検査では、血清ゴナドトロピン(LH、FSH)高値、血清テストステロン低値〜基準範囲内となる。超音波検査やMRI検査でミュラー管由来構造物が認められる。上記病因に示した遺伝子に原因変異が同定されることがある
診断
上記の症状、検査所見により診断する(診断の手引き参照)
治療
外陰部形成術と性ホルモン補充療法が主となる。男性として養育された場合、尿道下裂修正術、精巣固定術、男性ホルモン投与が行われる。男性ホルモンは、陰茎サイズを大きくするために乳幼児期から思春期前に行われる短期間の少量投与と思春期年齢に少量から漸増し成人期以降も続ける長期間の生理的補充投与がある。精巣の腫瘍化リスクがあるため精巣を摘出する場合がある。 女性として養育された場合、精巣摘出、陰核・陰唇・膣形成術を行い、思春期年齢に女性ホルモンや黄体ホルモンの補充を行う
予後
性分化以外の随伴症状、精巣腫瘍の合併がなければ、生命予後が悪化するというデータはない。生殖予後は原因疾患と重症度により多様で、思春期導入に性ホルモン補充が必要な症例や無精子症から、性ホルモン分泌低下は認めるものの治療を要さない症例や乏精子症まで幅広い
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児内分泌学会