1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 先天性副腎過形成症
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21-水酸化酵素欠損症

にじゅういちすいさんかこうそけっそんしょう

21-hydroxylase deficiency

告示

番号:59

疾病名:21-水酸化酵素欠損症

概念・定義

本症は副腎において17‐ハイドロキシプロゲステロン,あるいはプロゲステロンからそれぞれ11-デオキシコルチゾール,11-デオキシコルチコステロンの合成を触媒する酵素である21ヒドロキシラーゼ(P450 c21)が欠損する疾患である。本酵素の欠損症は常染色体性劣性遺伝を示し,臨床症状に多様性があり重症度の順に塩喪失型,単純男性型,更に遅発型に分類されている。我が国において1989年より新生児マススクリーニングが行われている。

疫学

先天性副腎過形成症の約90%以上を占める。発症頻度は約1.5~2万 人に1人と高頻度で認められ,また46,XX性分化疾患を示す代表的疾患である。

病因

本症は21ヒドロキシラーゼをコードとするチトクロームP450c21遺伝子の異常による。チトクロームP450c21遺伝子(CYP21A2)はその偽遺伝子であるCYP21A1遺伝子とともに第6染色体の短腕上のHLAClass III 領域内にある補体第4成分に隣接して存在する。このうちCYP21A2遺伝子のみ が活性酵素のための情報を有して発現している。両遺伝子の塩基配列は遺伝子の隣接領域及びイントロンを含めて98%のホモロジーを示す。このCYP21A2 とCYP21A1の両遺伝子が極めて高いホモロジーをもつことは,両遺伝子 間において頻繁に遺伝子組換えにより遺伝情報の交換を起こしていることを示唆している。 遺伝子解析により様々な遺伝子の異常,遺伝子欠失,変換,点突然変異などが同定されている。欠失の割合は15~30%である。 遺伝子の欠失が認められない症例では偽遺伝子に由来する遺伝子変換あるいは点突然変異による異常が同定されている。それ以外の変異も同定されている。遺伝型と重症度にはある程度の相関が認められる。

症状

21ヒドロキシラーゼは,17‐ハイドロキシプロゲステロン,あるいは プロゲステロンからそれぞれ11-デオキシコルチゾール,11-デオキシコルチコステロンの合成を触媒する酵素である。本症では,この酵素が欠損した結果,コルチゾール及びアルドステロンの産生が障害される。酵素障害により17‐OHPが蓄積し,これがP450cl7(CYP17)によ り△4アンドロステンジオン,更にはテストステロンに代謝され,過剰な副腎アンドロゲンが分泌される。この過剰な副腎アンドロゲンによって,出生時より女児において陰核肥大,陰唇の癒合などの外陰部の男性化が起こる。一方,男児においては外陰部は正常であるが,成長促進, 早期の男性化を起こす。 塩喪矢型(SW)は,上記男性化以外にアルドステロン合成不全により低Na血症,高K血症,循環不全を示す重症型で,早期の治療が必要 となる。単純男性化型(SV)は塩喪失症状を伴わないものである。遅発型(NC)は,出生時には無症状であるが,その後に早発恥毛,成長 促進,特に女性では男性化,生理不順などの症状を呈する。

治療

本症の治療は,急性期の副腎不全の治療とその後の維持療法とに分けられる。急性期の治療はグルココルチコイド及びミネラルコルチコイド欠乏,脱水,酸血症の矯正,低血糖に対して行われる。補液はグルコース(5~10%,Na+CI‐1各々90~130mEq/l)を主成分とし,K+を含まない液を用いる。Na欠乏ないし喪失水分量は24~48時間で補う。ホルモン療法として静注用(水溶性)コルチゾール10~20mg/kg(最大 100mg)を急速静注し,以後同量を24時間に均等点滴静注する。 急性副腎不全症状が改善されたのちには適宜,K+を含んだ維持輸液に変更し,このあと経口摂取が可能となれば以下の維持療法にうつる。治療の詳細についてはガイドラインなどを必ず参照する。維持療法では塩喪失型ではコルチゾール,フロリネフを,生後1歳まで食塩をミルクに混合し投与する。年長児では合成ステロイドを併用することもある。外性器異常に対しては生後2~3歳頃までに外性器形成術を行うことが多い。遅発型についての治療方針について一定の見解はない。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会