概念・定義
病因
30%は遺伝性出血性毛細管拡張症HHTに合併する。HHTではendoglinやALK1の遺伝子に異常を認めることがある。endoglinやALK1は増殖因子Growth factorの受容体である。動物実験でもendoglinやALK1の遺伝子異常は、肺動静脈瘻をきたすことが示されているが、その機序は不明である。 Glenn手術やフォンタン手術の遠隔期に、肝静脈からの血液の分布が少ない肺野に肺動静脈瘻を認めることがある。肝静脈には肺動静脈瘻の発生を防ぐ物質が含まれている可能性が示唆されているが、詳しい機序は不明である
疫学
比較的まれな疾患である。遺伝性出血性毛細管拡張症は秋田県に多い
臨床症状
小児期には無症状で、チアノーゼや胸部エックス線の異常陰影で発見されることが多い。年長になるにつれて、運動時息切れ、頭痛、昡暈、けいれん、失神などの症状をきたすようになり、脳梗塞、脳腫瘍、細菌性心内膜炎、喀血、血胸などを合併することがある
診断
自覚症状のほとんどない小児がチアノーゼと胸部の肺野の異常陰影を呈する場合には、本症の可能性が高い。 【胸部エックス線所見】 肺野に円形、楕円形の異常陰影を認めることがある。 【心電図】 正常のことが多い。 【心エコー図】 心エコーでは、末梢静脈や肺動脈に注入されたコントラストが左房に出現する。ただし、コントラストエコー法は非常に鋭敏で、臨床的に軽微な肺動静脈瘻でもコントラストが左房に出現する。左右の肺動脈でコントラストを注入すれば、肺動脈瘻がどちらの肺に存在するか判明する。 【心臓カテーテル・造影所見】 肺動脈圧は正常のことが多い。治療後には、肺動脈圧は上昇することがある。肺動脈造影で、瘻を造影できる。 【CT所見】 瘻を同定することができる
治療
治療は、カテーテルで塞栓術か、手術で肺切除する。近年は、手術はほとんど行われずカテーテル治療が主である。瘻がびまん性の時は、治療困難である
予後
瘻の血管が比較的小さいとき、びまん性でない時は、治療後の予後は良好である。瘻が多数あって治療困難なときは予後不良のことがある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会