概念・定義
両側の第4鰓弓動脈の遺残により重複大動脈弓が形成され、発生の過程で一部の血管が退縮・消失し、血管輪が生じる。病型としては右鎖骨下動脈起始異常、右側大動脈弓+左側動脈管、右側大動脈弓+左鎖骨下動脈起始異常、左総頸動脈起始異常、無名動脈による圧迫などがある。輪状となった血管により気管、食道の圧迫症状が出現する。病型によってはFallot四徴症などに合併して出現。呼吸器・消化器症状が認められる場合には早期に血管輪を解除する外科的治療が必要である。
病因
両側の第4鰓弓動脈の遺残により重複大動脈弓が形成され、発生の過程で一部の血管が退縮・消失し、血管輪が生じる。病型としては右鎖骨下動脈起始異常、右側大動脈弓+左側動脈管、右側大動脈弓+左鎖骨下動脈起始異常、左総頸動脈起始異常、無名動脈による圧迫などがある。血管輪の輪が小さければ気管・食道への圧迫は強く、輪が大きいか完全に閉鎖していない場合には圧迫症状は軽い。
疫学
先天性心疾患に合併することは稀である。病型によってはFallot四徴症などのチアノーゼ性心疾患に合併して出現。
臨床症状
気管・食道への圧迫の程度により症状は出現する。多くの場合は生後数ヶ月頃より症状が出現する。気管圧迫症状としては慢性咳嗽と喘鳴で、重症化すると呼吸困難やチアノーゼが出現する。首の屈曲により呼吸器症状は悪化し、伸展により軽快することがある。一方、食道圧迫症状としては嚥下障害、頻回の嘔吐、体重増加不良などである。
診断
理学的所見には特異なものはない。心聴診所見では合併心奇形がない限り心音は正常で意義ある心雑音を聴取しない。肺聴診にて吸気時にwheezesを聴取することがある。
画像診断が有用である。MD-CT(multi detector-row CT)、MRI、大動脈造影査にて血管輪の形態ならびに気管・食道との解剖学的位置の評価や気管・食道に対する圧迫の診断が可能である。MRIの検査施行の際に深睡眠を必要とするので新生児期・乳児早期に施行する場合は十分な監視が必要である。心エコー・ドップラ検査では血管輪の証明は困難な場合が多い。ただし、心内奇形を合併している場合にはその診断が可能である。
胸部X線では頸部異常血管に対する診断は困難である。なお、右側大動脈弓の診断は可能である。気管の圧迫の程度が強ければcheck valveとなり両側肺は過膨張像を呈する。
他に心奇形を合併しなければ、ほとんどの場合心電図には異常所見を認めない。
呼吸器症状が重篤の場合には気管支鏡検査を行い、大動脈からの圧迫の部位および気管支の狭窄の程度を評価する。
治療
新生児・乳児早期から呼吸器・消化器症状が認められる場合には早期に血管輪を解除する外科的治療が必要である。気管・食道の圧迫症状が軽度の場合には経過観察し、乳児期後期ないしは幼児期に血管輪解除術を施行する場合もある。一方、血管輪の解除術施行後も呼吸器・消化器症状が改善しない場合には気管支、食道の再建術やステントを留置して狭窄部位の拡大術を行う場合もある。ただし、効果については意見の分かれるところである。
予後
外科的治療により気管・食道圧迫症状が消失するような症例の予後は良好である。一方、血管輪の解除術を施行後も呼吸器・消化器症状が改善しない場合には予後不良となる場合もある。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会