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一側肺動脈欠損

いっそくはいどうみゃくけっそん

Unilateral absence of a pulmonary artery

告示

番号:1

疾病名:一側肺動脈欠損

概念・定義

 右室から主肺動脈を経て、片側の肺動脈にのみつながり、反対側の肺動脈が臨床的に認められない先天性心疾患。肺動脈分枝部が欠損するが、肺門部から末梢は存在することが多い。できれば、患側肺動脈に短絡術を施行し、肺動脈が成長すれば、主肺動脈と欠損側の肺動脈をつなぐ手術を検討する。

病因

 心臓大血管の発生初期において、大血管の原基である第4咽頭弓動脈と第6咽頭弓動脈の発生異常により、両側に動脈管が発生し、右心室と主肺動脈が片側の肺動脈のみに接続し、反対側の肺動脈は対側の動脈管に接続することにより、本症の形態異常が発症する。無脾症候群、染色体22q11.2微細欠失を認めることがある

疫学

 他の心疾患を伴わない一側肺動脈欠損は稀少疾患で、先天性心疾患の0.1%未満である。Fallot四徴症、無脾症候群に合併して認められることが多い

臨床症状

 心不全、肺高血圧を認めることがある。喀血、気管支拡張症を認めることがある。他の心疾患を合併しない場合には、無症状のこともある

診断

【胸部エックス線所見】 縦隔陰影の偏位(一側肺容積:肺動脈欠損側の低下)、主肺動脈陰影の拡大、肺血管陰影の左右差 【心電図】 右室肥大(肺高血圧合併の場合) 【心エコー図】 肺動脈分岐の異常、右または左肺動脈の欠損 【心臓カテーテル・造影所見、CT所見】 右室または肺動脈造影で肺動脈が一側しか造影されず対側の肺動脈が欠損する。肺門部から抹消の肺動脈の描出には、肺静脈楔入造影が必要である。  確定診断には、心臓カテーテル・造影所見、ないしCTで一側の肺動脈の欠損を証明する

治療

 肺高血圧と心不全に対する治療を行う。肺血流増加により肺高血圧、肺血管閉塞病変が進行するおそれがある症例では、(心内短絡がある例では)、第一期手術として肺動脈絞扼術を考慮する。肺静脈楔入造影で肺門部から抹消の肺動脈の存在が明らかになれば、その肺動脈に短絡術を施行すると、肺動脈が成長することがある。もし肺動脈が成長すれば、主肺動脈と欠損側の肺動脈をつなぐ手術を検討する。Fallot四徴症、無脾症候群などに合併している場合、心疾患の心内修復術に際して、主肺動脈と欠損側の肺動脈をつなぐ手術を検討する。術後も心不全、吻合部狭窄、肺血流低下、肺高血圧について内科的治療・管理を行い、要すればカテーテル治療ないし再手術を行う

予後

 肺高血圧の有無が予後を左右する。大部分の症例で肺高血圧を合併し、予後不良。肺炎を反復して死亡する場合もある。外科手術により血行動態が修復されれば、乳児期以降の生存が期待できるが、術後も欠損側の肺動脈の成長は乏しいことが多く、生涯的に内科的管理(必要に応じてカテーテルないし外科治療)を要する

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会