概念・定義
病因
半数以上の症例では合併奇形がないが、大動脈縮窄・離断、心室中隔欠損の組み合わせで漏斗部中隔が後方偏位することにより生じることがある。パラシュート僧帽弁または僧帽弁上輪と本症との合併をShone complexと呼ぶ。単独の場合はほとんどが孤発例であるが、家族性の本症も報告されている。心内膜床欠損の術後に発症することもある
疫学
大動脈狭窄全体の10-20%を占める
臨床症状
心筋症合併例をのぞき乳児期に発症することはまれである。 小児期にも自覚症状は無く発育も正常のことが多いが、重症例では、易疲労感、労作時呼吸困難、狭心痛、失神などを認めることがある。聴診上I音は正常であるが、重症例ではII音の分裂を認めずIII音、IV音を聴取する。胸骨右縁上部から頸部に放散する収縮期駆出性雑音を聴取する。胸骨上窩や頸部に振戦を触知する。大動脈弁閉鎖不全に起因する拡張期雑音を聴取することがある
診断
心雑音または合併心疾患が診断の契機となる。 心エコーで狭窄の存在部位、形態、重症度評価が可能である。 重症度評価や治療方針の決定のために心臓カテーテルを行うことがある。 大動脈弁狭窄、弁上狭窄との鑑別が必要である。 【胸部エックス線】 心拡大を認めることは稀であるが、左室肥大を反映して心尖部の円形突出を認めることがある。 【心電図】 左室圧負荷の程度に応じて左室肥大所見を認める。左側胸部誘導におけるST低下や陰性T波は重症狭窄に特異度が高い所見である。 【心エコー図】 大動脈弁下の左室流出路に膜性または線維筋性の狭窄を認め、狭窄の存在部位、形態などが診断できる。ドプラ法では狭窄後に乱流を認め、最大流速から圧較差を推測することができる。大動脈弁閉鎖不全を認めることがある。 【心臓カテーテル・造影所見】 引き抜き圧測定で狭窄部を介して左室内で圧較差を認める。左室造影では左室流出路に狭窄が描出される。大動脈造影で大動脈弁閉鎖不全を認めることがある
治療
50mmHg以上の圧差があるときに治療の適応がある。バルーン拡大術はほとんど無効であり、大部分の症例では外科的治療が行われる。弁下の膜様ないし繊維性突出が短ければ、切除術のみが行われる。狭窄が長い症例やトンネル状の狭窄に対しては、心室中隔を開き拡大する今野法やmodified Konno法が用いられる
予後
大動脈弁下狭窄は進行性する傾向があり、乳児期に問題となることは少ないが小児期-思春期に問題となることがある。大動脈弁閉鎖不全が進行することがある。手術死亡率は低い(5%以下)が、狭窄が再発や閉鎖不全の増悪が起こりうる
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会