概念・定義
発生・病因
胎生30日頃に房室管内面に隆起ができ,34日にはその前後が癒合して左右の房室弁口が形成される。本症では心室中隔流入部の低形成のため、心内膜床が心室方向に下垂して不完全に癒合する。このため房室弁の形成が不完全となり、同時に種々の程度の心房・心室間交通が残存する
疫学
新生児期の頻度は全先天性心疾患の2-4%である。Down症候群児にみられる心疾患としては約40%を本症が占め、その多くが完全型である。心房内臓錯位症に伴う心内奇形としても高率にみられる
臨床症状
血行動態は基本的には心房中隔欠損症と同様で, 心房での左右短絡による右室容量負荷と肺血流増加を示す。左側房室弁のcleftから閉鎖不全が進行しやすく、心房圧の上昇による肺うっ血をきたす。一般的に小児期は無症状に経過する。そのため健診にて、心雑音または心電図異常で発見されることが多い。加齢により心房間の左右短絡に加え、房室弁逆流、特に僧帽弁逆流の増悪により心不全症状を発症する
診断
治療
不完全型は心不全の進行がなければ,小児期までにパッチによる一次口閉鎖とcleftの修復を行う。時に弁形成術や人工弁置換術が必要なこともある。術後合併症として重要なのは,房室弁機能不全、肺高血圧の残存、不整脈、左室流出路狭窄の進行である
予後
胎児期には疾患頻度は10-17%程度であるが、新生児期の本疾患の頻度が3%前後となるのは重症例が自然淘汰されるためと考えられている。心房中隔欠損に比べて小児期から心不全症状を呈することが多い。これは多くの例で房室弁閉鎖不全を合併するためと考えられる。経過とともに逆流は増悪することが多い。術後経過はおおむね良好ではあるが、術前から重度の逆流や左室低形成のある例では乳児期から心不全症状が出現し手術も困難である。 加齢に伴って房室弁閉鎖不全が進行し、元来1度房室ブロックがあるため心房性不整脈の頻度が高く、30歳以前に心不全で死亡する例も認める。欠損孔が小さく房室弁逆流も軽い例は、老年期までほとんど無症状に経過する例もある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会