概要
疫学
全先天性心疾患の0.3~5.3%を占める。 I型69%、II型27%である
症状
肺血流減少型(a型、b型)ではチアノーゼが主体で、肺血流増加(c型)ではチアノーゼは軽く呼吸障害や心不全となる。Ib型では心室中隔欠損の狭小化、漏斗部狭窄の進行により、低酸素発作を生じる場合がある。聴診上はc型ではII音の亢進を認め、d型では収縮期駆出性雑音を聴取する
診断
【心エコー】 心エコーにて四腔断面で右房から右室へのつながりの閉鎖(多くは筋性閉鎖)、筋性閉鎖にともなう心房中隔と心室中隔の不整合 (malalignment)が基本となる。また、生存のためには心房間交通(右房から左房への短絡)が必須である。心室中隔欠損による左室から右室への短絡を認めることが多い。大血管は正常連結のものと大血管転位のものに分けられる。さらに肺動脈の狭窄の有無が診断できる。 【胸部エックス線】 肺血流減少型では心拡大は少なく、肺血流増加型では心拡大を呈する。心陰影は四角ばった形状となる。 【心電図 】 心電図で、左軸偏位、左室肥大~右室低形成型である。心房間交通の不良な場合には右房負荷、肺血流量の多い例では両房負荷を示す。純型肺動脈閉鎖とは左軸偏位の有無で鑑別する。 【心臓カテーテル・造影検査】 右心カテーテル検査では閉鎖した三尖弁のため右房から右室へカテーテルを挿入できず、心房間交通を経て、左房、左室へとカテーテルが挿入される。右房造影では造影剤は右室に流れ込まない。肺動脈の形態や圧の情報が得られる。これらはFontan手術に重要な条件となる。肺動脈が低形成の例では、Fontan手術が困難なことがある
治療
【内科的治療】 心不全には利尿薬、血管拡張薬を用いる。心房間交通が不良な場合は心房中隔裂開術(BAS)を行うことがあるが、まれである。また、肺血流減少が著しいときにはプロスタグランジンE1を使用して動脈管開存を図ったり、短絡術を施行する。 【外科的治療】 チアノーゼをなくすためにはFontan手術しかない。Glenn手術をまずおこない、次いでFontan手術を行うことがある。肺動脈が細い場合には短絡術にて肺動脈をの成長を図る。Glenn手術やFontan手術まで到達できない例もある
予後
生命予後は型により異なる。最も悪いのはⅡc型で、1年生存率は約5%である。大動脈縮窄・離断合併例はほぼ全例が死亡する。Ⅰa型も1年生存率は10%で不良である。 Fontan手術が成立すれば、その後の生存率は比較的よいが、Fontan手術20年以上経過すると、様々なFontan術後症候群が発症してくる
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会