概念・定義
病因
病因はウイルスが多いが、同定できないことも多い
疫学
小児での有病率は不明であるが、非常にまれな疾患である。急性心筋炎は剖検10万人あたり115人の頻度である。その中で、本症はさらに少ない
臨床症状
急性の心筋炎では炎症症状とともに心不全症状を認める。本症では、 数ヶ月以上持続する心不全や不整脈を認める。慢性心筋炎では、遷延する易疲労、呼吸困難、体重増加不良など
診断
[理学的所見] III音を聴取することがある。浮腫、肝腫大、腹水など心不全所見を認めることがある。 [胸部エックス線所見] 胸部エックス線で心拡大を認める。 [心電図所見] 非特異的なST変化を認める。 [心エコー所見] 左房、左室の拡大とびまん性収縮低下を認める。心室壁の肥厚は認めない。僧帽弁閉鎖不全を認めることがある。 [心筋シンチグラフィ] [MRI, CT, 心筋シンチグラフィ] 左房、左室の拡大と収縮低下を認める。心室壁の肥厚は認めない。心筋シンチグラフィで心筋灌流低下を認めることがある。ガリウムシンチ、ピロリン酸シンチで陽性であれば心筋炎が活動性であることを示唆する。 [心臓カテーテル、心筋生検] 左室の拡大と収縮低下を認める。心筋生検では、大小の単核細胞の浸潤、心筋細胞の変性、壊死、リンパ球の浸潤を認める。 [確定診断] 診断は、急性心筋炎に続く、慢性の心不全症状。心エコーで拡張型心筋症の病態。心筋生検や剖検で確定診断する。心筋におけるウイルス遺伝子の検出は診断の助けになる
治療
1. 日常生活の管理 無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。 2. 薬物治療 慢性心不全に対する治療をおこなう。利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬(カルベジロールなど)の投与を考慮する
予後
拡張型心筋症の病態となれば難治性で、予後不良である
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会