概念・定義
病因
トロポニンIなどサルコメアを形成するタンパク質の遺伝子異常や、デスミンなど細胞骨格蛋白の遺伝子異常に起因する場合がある。 遺伝子異常が判明しない場合には、原因は不明といわざるをえない。
疫学
小児での有病率は不明であるが、まれな疾患である。小児心筋症の2.5−5%を占める。小児の平均の発症年齢は6歳である
臨床症状
易疲労、呼吸困難、体重増加不良などを認め、無症状例は少ない。労作時の呼吸困難が特徴的である
診断
[理学的所見] III音を聴取することがある。浮腫、肝腫大、腹水など心不全所見を認める。 [胸部エックス線所見] 胸部エックス線で肺うっ血を認めることがある。 [心電図所見] 左室肥大を認めることがある。ST低下など非特異的所見を認めることがある。 [心エコー所見] 左室流入波形で左室拡張障害を認める。この所見に呼吸性変動がない(収縮性心膜炎との鑑別に重要)。心室壁の肥厚は認めない。左房は拡大、左室は拡大しない。左室収縮低下はない。 [心筋シンチグラフィー] 心筋シンチグラフィーで心筋灌流低下を認めることがある。 [心臓カテーテル、心筋生検] 左室の拡張障害の所見を認める。左室拡張末期圧上昇、左室圧の拡張期dP/dtの低下、拡張期圧square root sign。心筋生検では、心筋の変性、線維化を認める。 確定診断は、かたい左室、左室拡大はない、収縮能は正常、基礎疾患はない、で診断。心エコー、心臓カテーテルが重要
治療
1. 日常生活の管理 無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。 2. 薬物治療 慢性心不全に対する治療をおこなう。利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬(カルベジロールなど)の投与を考慮する。β遮断薬による徐脈化で左房圧を下げるという考えもあるが、効果は未だ不明である。 急性心不全には、利尿薬、フォスフォジエステラーゼIII阻害薬、カテコラミンの点滴をおこなう。 不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植え込み型除細動器(ICD)が適応となる。 3.デバイス治療: 心停止蘇生例に対しては、ICD植え込みが適応となる。 4.心臓移植 予後不良であるので、心臓移植を考慮すべきである。その前に状態悪化が予想される時は、人工心臓の植え込みが適応となる場合がある
予後
難治性の予後不良の疾患である。特に乳児期発症例は予後が不良である。小児の2年生存率は50%である
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会